インターネットを活用し、「写真流通市場」を創出article_gp

菅谷洋司氏は、自らの夢を実現するため、55歳で起業を果たした。その夢とはインターネット上に日本発の「写真流通市場」を創出すること。しかし、夢の実現は容易ではなかった。菅谷氏は複数のシステム開発会社に打診するも、予算面で折り合いがつかなかった。Webサービスの開発前に、資金の問題に直面したのだ。そして唯一、その問題をクリアできたのがオーシャンだった。いったいオーシャンはどうやって予算内で開発を成功させたのだろうか。

Profile

菅谷 洋司(すがや ようじ)

1949年、北海道生まれ。1972年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、社団法人共同通信社に入社。写真記者として32年間にわたって約60ヶ国で取材活動を行う。 2006年にグローバル・フォト・エクスチェンジ株式会社を設立し、代表取締役に就任。日本外国特派員協会正会員。

 

元共同通信社の写真記者が描いた夢

御社は写真流通サイトを運営し、写真家が撮影した報道写真・広告写真の売買仲介をしています。 このWebサービスを立ち上げた経緯を教えてください。

私は32年間にわたって、前職の共同通信社で写真記者をしていました。その中で、私はある問題意識を感じていたんです。それは「日本の写真家は活躍の場が限られている」ということ。写真家が写真を発表できる場はマスメディアだけでした。

 

一方、海外の写真家は、マスメディアだけでなくインターネット上にも活躍の場を広げていました。彼らは写真流通サイトを利用し、インターネット上で写真を販売していたんです。これを知った私は衝撃を受けました。

 

そして、「このようなWebサービスを日本発で創れないか。そうすれば日本の写真家にもっと多くの活躍の場を提供できる」、私はそう考えるようになりました。つまり、インターネット上に日本発の「写真流通市場」を創ろうと考えたんです。

 

サービスは順調に立ち上げることができたのですか?

いえ。サービスの開発前に、資金の問題にぶつかりました。開発費1,600万円。これがシステム開発会社に提示された見積もり金額でした。正直、ショックでしたね。私が想定していた予算は、その3分の1以下でしたから。

 

その後、何社ものシステム開発会社に相談しましたが、どの会社も似たような感触でした。私の用意できる予算と業界相場、この間には大きな隔たりがあったんです。 そんな時、知人からオーシャンの谷尾さんを紹介されました。私は谷尾さんに、私のありったけの熱意を伝えました。前職の経験、写真流通サイトへの想い、資金の問題などを洗いざらいお話ししたんです。すると、私の熱意が通じたのかもしれません。谷尾さんは親身になって相談に乗ってくれ、開発の可能性を一緒に模索してくれました。

 

そして何度か打ち合わせを重ねた後、谷尾さんに見積もり金額を尋ねたんです。すると、こんな答えが返ってきました。「菅谷さんの構想は非常に有意義だと思う。色々と工夫をして、業界相場の3分の1の予算で開発してみましょう」と。この言葉を聞いて、私は飛び上がるほど嬉しかった。オーシャンに断られたら、もう他にあてがないと思っていたので。正直、サービスの開発自体を断念することも覚悟していたくらいでした。

 

低予算で開発できた秘密

なぜオーシャンは低予算で開発できたのでしょうか?

その理由は2つあると思います。

 

1つ目は、開発機能の絞り込み。一般的にシステム開発会社は、開発機能が増えるほど儲かると思います。だから顧客の要望には何でも応え、膨大な数の機能を作ろうとすると聞きます。しかし、オーシャンは違いました。当社の要望を鵜呑みにせず、開発機能の投資対効果を一つひとつ精査してくれた。その結果、サービスの本質を損なわずに、優先度の低い開発を削ぎ落とすことができたんです。

 

2つ目は、オーシャンの組織体制。オーシャンは自社でスタッフを雇用せず、各プロジェクトの必要な時に必要な人材のみを集めていると聞いています。これは他のシステム開発会社と違い、合理的な組織体制だと感じました。おそらく他のシステム開発会社では、管理系スタッフの人件費などのコストも開発費に上乗せされているようです。一方、オーシャンはプロジェクトに直接関係するコストしか、開発費に計上しないそうです。

 

ITオンチでコミュニケーションに苦労

予算の問題をクリアした後、開発は順調に進みましたか?

実はコミュニケーションの面でも苦労しました。私は自他ともに認めるITオンチ(笑)。具体的なシステムの話になると、話がサッパリ分からない。オーシャンの開発陣とも話が通じずに、しばしばミーティングを中断してしまいました。

 

しばらくして、オーシャンはITの専門用語を使わずに、私に伝えてくれるようになりました。たとえば、私は「スクロール」という言葉を知らなかった。すると、壁に紙を張り、その紙の上に両手で枠組みを作って上下に動かし、スクロールの意味を視覚的に伝えてくれました。 また、開発途中のWeb画像を定期的に送ってくれました。

 

「現在こういう開発状態ですが、出来上がりのイメージにズレはありませんか?」と定期的に確認してくれた。このようにオーシャンが様々な工夫をしてくれたおかげで、コミュニケーションが非常に円滑になりましたね。

 

サービスをスタートさせた後、手応えはいかがですか?

開発から約6ヶ月後、無事にサービスがスタートできました。その後、知り合いの写真家に声をかけると、国内外から写真が集まり始めました。さらに、現在も写真数やユーザー数は少しずつ伸びています。 すでに日本の写真家たちの間では、日本発の「他にない新発想の写真流通市場」という認識が高まっています。今後の課題は事業の収益化。ぜひこれからも頑張りたいと思います。

 

グローバル・フォト・エクスチェンジ株式会社

設立 2006年5月15日

事業内容 写真を主とするデジタル図画像の取引市場の運営・管理、写真撮影・販売

http://http://www.globalphotoex.com/