顧客事例-オールフロンティア様voice_allfrontier

建設用足場資材の中古買取・販売およびレンタルを行う「足場王」を運営している株式会社オールフロンティアでは、基幹業務システム開発をオーシャン・アンド・パートナーズに依頼しました。その経緯と評価について、事業部長の森川功一様、現場担当者の佐藤雅美様に詳しく伺いました。

 

「足場王」について

住宅等の新築時あるいは補修時に作業用の「足場」を組むために使う足場資材の中古品買取・販売とレンタルサービスを行うため、2007年に株式会社オールフロンティアが立ち上げた事業。株式会社オールフロンティアは1996年に創業し、スバル車に特化した中古車販売「オートフロンティア」、軽未使用車販売の「レディバグ」、二輪・四輪車の中古パーツ販売「アップガレージ」等、中古流通ビジネスを中核として複数の事業を展開している。

 

足場資材を利用する建設業者様のニーズに応えた、きめ細かなビジネス

基幹業務システム開発を依頼された「足場王」について概要を教えてください

森川:建設業では、住宅やビルの新築時あるいは外壁の補修のようなメンテナンス工事で「足場」を使いますので、そのための中古の足場用資材の売買、およびレンタルを行っています。

 

具体的には、住宅や中低層建築の工事を行う建設業者様から余剰の「足場資材」を買い取り、必要としている建設業者様に販売しています。その際、ローン、つまり分割払いもご利用いただけるようにしています。すべてが中古品というわけではなく、新品の販売も行っておりますので、資材メーカーさんからの仕入れもあります。 また、短期利用のニーズに応じるためにレンタルも行っています。

 

この事業の出発点は、『くさび緊結式足場』の中古を探すのが難しい、という建設業者様の声でした。『くさび緊結式足場』というのは30年ほど前に開発された比較的新しい種類の足場資材で、簡単に足場を組めるので工事のコストダウンに役立つのですが、歴史が浅いこともあって中古の流通が未発達でした。

 

そこで当社がくさび緊結式足場専門の中古流通事業を立ち上げ、今ではくさび緊結式足場資材の中古に限らず、仮設足場資材の全メーカー、全商品を新品も含めて取り扱っています。小口での販売もパイプ1本から可能ですし、レンタルでも工事期間中の使用数の変動などにきめ細かく対応できる体制を組んでいます。

 

基幹業務システムの独自開発を必要とした課題とは

今回の基幹業務システム開発の背景にどのような課題があったかを教えてください

森川:当社にとっての課題は、建設業者様にとってのニーズが原点にありますのでそこからお話しさせていただきます。

もともと建設業者様にとってのニーズとして、「工期短縮」「低価格調達」「資金繰り改善」「短期利用」の4点がありました。

 

1.工期短縮 ができればその分、コストダウンになります。実はこのために役に立つのが「くさび緊結式足場」で、近年利用が広がっていました。

 

2.低価格調達 ただ、それを使うにしてもできるだけ低価格で調達したい、ということで中古品へのニーズが出てきていました。

 

3.資金繰り改善 工事の期間中、人を雇ったり、資材を購入するのにお金がかかるのに、お客さんから工事代金を受け取れるのは完工後ですから、その間の資金繰りはどの建設業者様にとってもアタマが痛い問題です。そこで分割払い(割賦販売)のニーズがありました。

 

4.短期利用 他に、足場は工事中しか使いませんので、必要な時だけ借りられれば資材置場を用意する必要がなくなるためコストダウンができる、ということでレンタルのニーズがありました。

 

こういった建設業者様の課題を全部解決しよう、ということで足場王では「くさび緊結式足場」を中心として中古足場の「買取・販売」と「レンタル」を行ってまいりました。

 

おかげさまで建設業者様にご支持をいただきまして、事業は順調に拡大して参りましたが、拡大にともなって今度は当社、「足場王」にとっての課題が出てきました。「業務の煩雑化」です。煩雑化した理由はおおまかに「多拠点化」と「レンタル」の2つです。

 

1.多拠点化 について、足場王では鶴ヶ島市と日高市の2ヶ所に拠点があり、さらに2013年のうちに東北に新拠点を開設する計画もありました。そこで、それぞれが持っている在庫と原価のリアルタイムな把握、顧客情報や商品情報のマスタデータの共通化が大きな課題でした。

 

2.レンタル については別途詳しく説明しますが、売買とレンタルという同じような資材を用いながらも、二つの異なる業態を扱うことで、データ処理が複雑化しました。

 

これらの事情があって煩雑化した、商品の在庫管理、原価管理、顧客情報管理、支払と請求処理等の業務をパッケージソフトで解決できないかと、汎用の業務ソフトウェアパッケージもいろいろと検討しましたが、なかなか思うようなものがありませんでした。

 

そこで、独自のシステムを開発しようと考えたわけです。ただし、今の業務のやり方、ビジネスフローをそのままシステム化するのではなく、フロー自体を見直し、単純化した上でシステムを作ろう、と。それが、今回のシステム開発の背景です。

 

市販パッケージが想定していないビジネスフローが必要だった

市販パッケージでは業務の煩雑化に対応できなかったというところをもう少し教えてください。

佐藤:市販の業務パッケージを使おうとして困ったのは、たとえば販売管理とレンタルの両方を一括して扱えるものがないということです。レンタル・リース用の業務パッケージ、あるいは販売管理系のパッケージをいろいろと検討しましたけど、これだ、というものがありませんでした。

 

それで販売管理メインのパッケージを使い、足りない部分はExcelに入力して手作業で処理していました。そうすると大変だったのが、たとえばレンタルの請求書を作る作業です。

具体的にどのように大変だったのでしょうか?

足場のレンタルは、通常のレンタル業と違い、貸した商品の数と、都度返却されてくる商品の数が必ずしも一致しません。このようなビジネスフローの存在が、請求書作りを困難にしました。

 

例えば、足場のレンタルの場合、「A社に足場100本を貸す」→「2週間後に50本追加で貸す」→ 「3週間後に120本がA社から返却される」→ 「4週間後に残り30本返却される」というように、「貸した数」と「返却される数」が一対一対応していません。この場合、月末に状況を正確に把握して、請求書を作るのは、複雑な作業になります。

 

当初は既存の販売管理パッケージを使って、請求書を作ろうとしましたが、結局、ムリでした。しかたなく、請求書はExcelを使って手づくりしていましたが、販売管理ソフトとの二重入力が必要な上に作業は煩雑で時間もかかります。定型化できるところはシステムに載せて請求処理を効率化することは、解決すべき課題の一つでした。

 

複数拠点の在庫と原価をリアルタイムに把握できるようにしたい

レンタルのビジネスフローの他に、販売業務での在庫と原価の管理も改善されたのでしょうか?

多拠点の在庫をリアルタイムに把握することと、原価をドンブリ勘定にしないこと、これは重視していました。

 

在庫をリアルタイムに把握できればお客様からの問い合わせにすぐ応えられますし、何にいくらのコストがかかっているのかをきっちり管理できれば、お客様と当社の双方に利益のある取引を継続できます。そのためにはきめ細かな実績の管理が必要で、それを人手でやるのは非現実的でした。

 

本来コンピュータがやれるはずの仕事を人間がExcelでやっている、という状態からは卒業しなければならない、と考えていました。

 

システム開発会社選定の経緯

開発をオーシャン・アンド・パートナーズに依頼することを決めた経緯について教えてください。

森川:独自のシステムを作らなければいけない、じゃあどこに頼もうか、と考えた時に思い出したのがオーシャン・アンド・パートナーズの谷尾さんでした。谷尾さんとは学生時代からの長いつきあいがあり、就職の相談に乗ってもらったこともありますし、頼りになる人だということがわかっていました。 このようなシステム開発をする能力も実績も十分にあることはわかっていたので、「こういう開発ができないか」と打診してみたら、できそうだ、ということでそのまま依頼したような次第です。

開発予算はいつの段階で決定されたのでしょうか?

森川:構想を立てた当初から予算はある程度決めていて、その範囲でできることをやろうと考えていました。パッケージを使うことを考えた場合よりは少し高い額ですが、パッケージではできない、当社のビジネスの核の部分をカバーできることを考えれば、何倍も価値がある投資だと思っています。

 

もやもやした要望を相談できる会社が欲しかった

もしもシステム開発を委託する候補が数社あってその中から選ぶとしたら、どのようなポイントを判断基準として考えますか?

森川:いくつかありますが、第1に「相談できる会社であり人である」ということ。第2に、ともに成長するパートナーとして関わってくれること。第3に、システムの開発、運用に関する能力と実績ですね。

それぞれ詳しくお聞かせ願えますか?

森川:3番目の能力・実績はどの会社でも条件に上がると思いますのでそれ以外についてお話しします。

 

1.もやもやした要望を相談できる会社であり人であること

 

普通、汎用のパッケージだったら、ユーザーが「取引先ごとの請求処理をしたいんだけど・・・」というような要望を出したとき、「それならこの機能でできますので使ってください」となります。

 

よくある業務なら先行事例もあるので既に機能が出来てることが多いし、ユーザーもシステム会社さんもイメージを持ちやすいんだと思います。 しかし、「足場王」では足場資材の調達に悩んでいる建設業者様のニーズに徹底的に対応しようとしたため、既存のパッケージでは用意されていないような業務がありました。

 

こういう、先行事例のないものは私たちユーザーもシステム開発会社も最初は明確なイメージを持ってないんです。そのため、仕様を明確にしてくれればその通り作ります、というシステム会社ではダメでした。 たとえばうちの佐藤から出てくるもやもやっとした要望をヒアリングしてもらってお互いキャッチボールしながらカタチにしていく。それが、「相談できる」という意味です。

 

佐藤:森川さんはよく、「谷尾さんには依頼ではなく相談をしよう」と言ってますよね。

 

森川:うちで出来ることはうちでやる、本当にシステム化した方がいいことだけを谷尾さんに頼む、という考えがあるからです。「あれもこれもシステムで対応してもらおう、頼んじゃえ」というような安易な依頼は絶対に避けよう、ということです。

 

「本当に頼むべきこと、システムに載せるべき機能は何なのか」は自分たちでアタマに汗をかいて考えなきゃいけない。だから「依頼ではなく相談」なんです。そういう「相談」に乗ってくれる会社と仕事がしたかったんです。

 

2.ともに成長するパートナーであること

 

森川:今回は「足場王」の業務システムを依頼しましたが、これはあくまで第一歩です。私たちは変化の激しいビジネスをしているので、私たちのビジネスの本質を理解して、一緒にビジネスを育ててくれるパートナーがシステム開発を担ってくれることが望ましいと考えました。「ともに成長するパートナーである」というポリシーを持っている人であり会社であることも重要なポイントでした。

 

開発プロジェクト成功の鍵となった現場担当者の役割

実際の開発プロジェクトはどのようなスケジュールで進んだのでしょうか?

佐藤:2011年の末に最初の打合せをして、年明けからスタートしました。8月に試験的に使い始めて実際に業務が回るかどうか検証し、9月から本格運用にこぎ着けました。うちは10、11月が繁忙期ですので、使い慣れた状態で10月を迎えたいというデッドラインに間に合いました。

 

佐藤:おかげで去年、2012年の10月以降は前年までに比べるとすごく楽になりました。Excelへの二重入力も人的ミスもなくなりましたので本当に助かっています。

現場の要望については佐藤様がとりまとめられたのでしょうか?

佐藤:はい、私が担当しました。PCに詳しいわけでもないし、専門用語も知らないのですが、とにかく要望を集めて出すと、オーシャン様は現場目線で対応してくれたので助かりました。

現場目線での対応というのはどのようなことでしょうか?

佐藤:私から出す要望というのはそのまま実現するのは難しいものも多かったと思うんです。でもそれを単にできませんというのではなくて、要望が出てくる背景とか理由を考えて、その目的なら代わりにこういう方法ではどうですか、と、こちらが本当にやりたいことを踏まえた提案をしてくれるという感じです。

 

谷尾さんも、オーシャンで開発実務を担当してくれた角田(かくた)さんもどちらもそんな方だったので安心して相談できました。

 

【谷尾から一言】

システム開発会社の側から見ると、佐藤さんのような現場担当者の存在はプロジェクトの成功を左右する大きな要素です。

 

そもそも企画段階で何をシステムに盛り込んで何を切るか、この判断には現場を知る人間と経営的な視点の双方が欠かせません。

 

また、システムが出来れば実際に試験運用をしてもらって業務が回るかどうか検証する必要があります。 現場担当者による社内での働きかけがしっかりしていると、ここが滞りなく進みます。

 

それらをクリアしてくれた佐藤さんには私どもも感謝しております。

御社では事業のトップは現場に出ないという方針を取られているそうですね。

森川:はい、これは驚かれることも多いですが、社長の平林の経験を踏まえて、ハッキリ意図してその方針をとっています。

 

上司がいると依存心が生まれます。「どうしたらいいか教えてください」という、上からの指示を待つ社員になってはいけない、現場のことは自分が把握して切り盛りしていく、自信と自律を持って仕事が出来る、そんな人間になって欲しい、ということです。

平林社長の経験というのはいつごろのことなのでしょうか?

森川:当社は1996年に創業し、10年ぐらいは順調に事業を拡大してきました。それが踊り場にさしかかった2005年ごろのことです。それ以前のことを平林が回想していうんですが、「あの頃、うちの会社で働いていた社員たちは、いわば僕の手足でした」と。それまでは、それが合理的な状況でした。社員が社長の指示通りに迅速に動くことが会社の成長に直結していたのです。

 

しかし2005年当時それではうまく行かないステージに達していました。会社の規模が大きくなり、事業は多角化し、従業員数も飛躍的に増えていた。そういう中で社長一人が全ての社員に細かく指示は出せない。自分で考えて行動できる社員でないと現場も事業も動かない。平林がそう考えた時から、「会社は人が育つ場である」が当社のポリシーとなりました。

 

現場は現場で自律的に判断してスピーディに対応していく。責任と権限を持つことで社員は成長し、それによってお客様も社員も気持ちよく仕事が出来る。そのために上の人間は現場では出来ないレベルの、たとえば戦略的なパートナーシップの構築に力を注ぐという関係になっています。

今回のシステム開発を進めるに当たって、そのポリシーはどのような意味を持ちましたか?

佐藤:このシステム化の構想が出たとき、現場でのとりまとめを特にとまどいも無くやれたのは結局そこだと思います。命令されてやることであれば抵抗があったかもしれませんが、別にパソコンに詳しいわけじゃないけどこれは自分がやるしかないだろう、とすんなりそう考えられましたので。新しいシステムを作るとなると、今までの仕事のやり方を変える部分も出てきますし、一時的に作業者に負担がかかります。

 

でも「仕組みを変えることで最終的には楽になる」という意識を持っていたので、押しつけられているような感じもなく、自分で率先して社内への働きかけを進めて、利用を浸透させることができました。それには、自分がしている仕事の意味を普段から自分で考えて自覚していたことが役に立ったと思います。

上司の役割である戦略的なパートナーシップとはたとえばどのようなことでしょうか?

森川:今回のシステム開発などがその例です。戦略的パートナーとして一緒に成長していける会社、ということでオーシャン・アンド・パートナーズさんに開発を依頼したわけです。

 

オーシャン・アンド・パートナーズへの評価

開発プロジェクトの企画から1年、実運用から4ヶ月を過ぎたわけですが、その経験を踏まえてのオーシャン・アンド・パートナーズへの評価をお願いします。

森川:期待通りの仕事をしてくれました。感謝しています。特にレンタルのビジネスフローをシンプルに構成してくれたおかげで、改善を進めやすくなったのは期待以上でした。ありがとうございます。

 

佐藤:先ほどもお話ししましたが、現場目線で対応をしてくれたことで非常に気持ちよく仕事が出来ました。ありがとうございます。

 

先輩ユーザーとしてのアドバイス

これからオーシャン・アンド・パートナーズへ開発案件を依頼する会社にとっては、御社はある種の先輩ユーザーと言えますので、その立場からユーザー企業へのアドバイスがあればお願いします。

森川:モノを買うのとは違いますので、一緒に成長を買うつもりで、ビジョンの共有に時間をかけるといいと思います。

 

佐藤:基本姿勢は「とにかく相談」ですね。何に困っているか率直に相談すると、いい話し合いができると思います。

 

今後の期待

オーシャン・アンド・パートナーズへの今後の期待をお願いします。

森川:「足場王」だけでなく、別事業部でのシステム化案件もありますので、変化の早い事業に追随できるよう、変わらぬスピード感でおつきあいをお願いします。

 

佐藤:「足場王」にしてもこれで完成ではなく、システムも成長していくものだと思っています。さらなるご支援を期待しています。

 

株式会社オールフロンティア 「足場王」 森川様(中央)、佐藤様(右)

オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 谷尾(左)

※ 文中に記載されているお客様の役職や数値などの情報は、いずれも取材した2013年1月時点のものです。