1つの商品に2つのシステム。
増改築の積み重ねが限界を迎えたとき、何から始めるべきか
「1つの商品に2つのシステム」それが、すべての見直しの出発点でした。
長年にわたり通信教育や検定事業を展開してきた経済法令研究会様。
サービスの拡張に伴い、業務やシステムは徐々に複雑化していきました。
8年前に構築したシステムに、7年間にわたり機能追加を重ねてきた結果、業務と仕組みは徐々に複雑化していきました。
発送は手作業。
顧客情報は分断。
新しい機能の追加も、構造上難しくなっていました。
こうした状況を打開するため、経済法令研究会様では半年をかけて業務を徹底的に洗い出す取り組みを行いました。

取締役 加納 美奈氏、営業推進部 次長 七島 意明氏
経済法令研究会について
金融機関職員向けの教育サービスを中心に事業を展開する、日本を代表する金融教育企業の一つ。書籍、通信講座、セミナー、検定試験など、多様な形式で金融実務に関する教育コンテンツを提供。
中でも「銀行業務検定試験」は50年以上の歴史を持ち、全国ほぼすべての金融機関において人事研修や評価制度の一部として活用されており、累計受験申込者数は1,000万人を超える。創業は1957年(昭和32年)。
同社の事業は、教材や検定試験、通信教育といった継続的に利用される商品・サービスを多数扱う点に特徴があり、顧客情報や購入履歴の管理は、業務運営そのものに直結する重要な基盤である。
■増改築を重ねてきた結果としての現在の限界
今回のシステムを刷新することにした経緯、および従来の課題について教えてください。
以前のシステムは、8年前に作ったもので、それから7年間、必要に応じて機能追加を重ねてきました。
しかし、時代の流れとお客様のニーズの変化により、次のような問題が生じ、機能の追加では対応できなくなってきました。
「1つの商品に2つのシステム」それが、すべての見直しの出発点でした。
課題1「1つの商品に2つのシステム」
システム開発当初、「個人向け販売」を想定し開発しましたが、その後、顧客の要望に応じて「法人向け販売サイト」を別サイトとして追加しました。
これにより、一つの商品を販売しているにもかかわらず、システムは個人用と法人用の2通り存在するという構成になりました。
システムが2つということは、社内の業務も2通りに分かれることになり、きわめて非効率でした。
また、お客様も両サイトに登録した場合、2つのID・パスワードを管理しなければならず、非常にご不便を強いる結果になりました。
課題2「マイページ」機能の実現が困難
毎年、定期的にご購入いただいているお客様に対し、購入履歴や、ご購入いただいた商品の追加情報をお知らせする「マイページ」機能が必要と考えました。
しかしながら、従来のシステムでは情報を集約する機能がなく、構造上追加することが難しい状態でした。
そのため、システム自体を抜本的に作り直す必要があると考えました。
課題3 発送手配の合理化
教材の発送会社に、発送先となる顧客データを送るプロセスが自動化できておらず、事実上「手作業」で処理していました。
課題4 セキュリティへの対応
以前のシステムのセキュリティは、開発当初2010年の時点では必要十分な水準にありました。
その後も改良を重ねてまいりましたが、時代の要請とともに、抜本的な再構築に乗り出す時期を探っていました。
刷新の意思決定
これら積年の課題を解決するべく、「基幹システムおよびWebサイトを全面刷新すること」を決めました。
次いで、既存取引先やオーシャン・アンド・パートナーズなど数社を候補として、システム開発を依頼するIT企業の比較検討を行いました。
発注先に求めた「進め方」の条件
システム開発を依頼する企業を選ぶにあたり、どのような点を重視されたのでしょうか。
私たちは、単にシステムを作る技術力だけではなく、当社の業務を深く理解しようとする姿勢を持っているかどうかを重視しました。
今回の刷新は、既存システムの延長ではなく、業務のあり方そのものを見直す取り組みになると考えていたため、
表面的な理解では対応できないと感じていました。
また、今回の取り組みでは、最初の整理の段階に十分な時間をかけることが不可欠であると考えていました。
短期間で形を決めてしまうのではなく、業務を一つひとつ洗い出し、必要な時間をかけて検討できる進め方ができるかどうか。
それが、私たちにとって重要な判断基準でした。
具体的には、次のような点を重視しました。
① 当社の業務を理解しようとする姿勢があること
私たちの業務は特殊な部分も多く、表面的に仕様を聞くだけでは理解できない部分が多くあります。
そのため、業務の背景や考え方まで踏み込んで理解しようとする姿勢があるかを非常に重要視しました。
② 十分な時間をかけて整理できる体制があること
今回の取り組みでは、最初の整理の段階に十分な時間をかける必要があると考えていました。
そのため、短期間で結論を出そうとするのではなく、必要な時間を確保して進められる体制があるかどうかを
重視しました。
③ 複数の選択肢を提示できること
私たちは、一つの案だけを提示されるのではなく、複数の選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットを
丁寧に説明してもらえることを求めました。
その上で、最終的な判断は私たち自身で行いたいと考えていました。
④ 長期的な視点で責任を持てること
システムは作って終わりではなく、長く使い続けていくものです。
そのため、短期的な開発だけではなく、長期的な視点で責任を持って関われる企業であることを重視しました。
■半年かけて業務を洗い出した理由
課題が明確になった後、実際の整理は、どのように進められたのでしょうか。
こうした条件を踏まえ、実際の取り組みでは、業務を徹底的に洗い出すところから始まりました。
増改築の方式を取ると、あとあと面倒なことになる。
それは今までの経験で身に沁みていました。
完成してから大変な思いをしないためにも、最初の段階で当社の業務内容、課題、要望をすべて伝え切ることが重要。
それが当社の思いでした。
オーシャン・アンド・パートナーズはそれに応え、ヒアリング、分析に半年をかけてくれました。
毎週、テーマを定め、関連部門が集まって討議し、それをもとに仕様を固めていくのです。
実際に毎回、私たちと真剣に議論してくれました。
ここまで真剣さを見せてくれる企業は希少です。
ひとつの価値観、選択肢だけを示すのではなく、常に複数の選択肢を提案した上、それぞれの案のメリットデメリットを説明し、その上で私たちに最終選択を求めるという姿勢を見せてくれました。
複数案を比較しながら進めた意思決定
仕様を固めていく中で、意思決定はどのように進められたのでしょうか。
業務の整理が進むにつれて、具体的なシステムの構成や進め方についても、検討を重ねていくことになりました。
同社は、ひとつの価値観、選択肢だけを示すのではなく、常に複数の選択肢を提案した上、それぞれの案のメリットデメリットを説明し、その上で私たちに最終選択を求めるという姿勢を見せてくれました。
私たちとしてもしっかりした比較検討を経た上で、納得して仕様を決めることができました。
■納得して進められたことの意味
今回の取り組みを振り返って、どのような点が印象に残っていますか。
振り返ってみると、設計の段階で時間をかけて整理したことが、その後の判断のしやすさにつながっていたと感じています。
自分たち自身が業務を理解し、選択肢を比較した上で判断できたこと。
それが、今回の取り組みにおいて最も大きな成果だったと感じています。


















