AIはまず触るべき理由|企業が最初の一歩で決めるべき4つのこと

「生成AIが気になる。」

そう思いながら、半年以上、何も始められていない。

私たちは、生成AIはまず触ってみるべきだと考えています。

ただし、「まず触る」ことと、「何も決めずに始める」ことは、まったく違います。

半年動けなかった企業に足りないのは、行動力ではありません。触る前に決めておくべきことと、その決め方の基準が、分からないだけです。


半年動けない本当の理由は、「決めた後に何が起きるか分からない」から

半年以上、生成AIに手を付けられていない企業には、共通する理由があります。

それは、「何を決めればいいか分からない」ことではなく、「決めた後に、何が起きるか分からないこと」です。

もう少し具体的に言えば、

  • 情報を入力した結果、漏えいが起きたらどうするか
  • 生成された文章や画像が、誰かの著作権を侵害していたらどうするか
  • 試した結果、費用対効果が見えないまま投資だけが続くのではないか
  • 自分が「最初に言い出した人」として、失敗の責任だけを負うことになるのではないか

この不安です。

特に最後の一つは、多くの日本企業に共通する感覚だと思います。言い出しっぺが失敗すれば評価が下がり、何もしなければ現状維持で済む。この構造がある限り、「情報を集めれば動ける」わけではないのです。

だからこそ、この記事でお伝えしたいのは、決めるべきことのリストだけではありません。何を基準に決めればいいか、その判断の軸まで含めてお伝えします。


生成AIは「まず触る」ではなく「まず決める」

ここで一つ、お伝えしておきたい現実があります。

会社として何も決めていない間にも、現場の社員は、すでに個人のChatGPTを業務に使い始めている可能性があります。いわゆる「シャドーAI」です。

つまり、「決めるかどうか」を検討している間も、リスクはすでに発生し得る状態にあります。決めないことは、リスクを避けることにはなりません。

次の項目を決めてください。あわせて、それぞれ「何を基準に決めるか」もお伝えします。

① 誰が触るか

全社員ではありません。情報システム担当者、または各部署から手を挙げた3〜5名程度で十分です。

中小企業であれば、まずは経営者や管理部門の責任者が試してみるだけでも十分です。情報システム担当者がいない企業の方が多く、そこで足を止める必要はありません。

判断の軸:過去に新しいITツール(クラウド勤怠管理やチャットツールなど)を導入したとき、現場からの抵抗が大きかった会社ほど、対象人数を絞ってください。抵抗が大きかった会社が最初から複数部署を巻き込むと、検証そのものが立ち消えになりがちです。逆に、過去のツール導入がスムーズだった会社は、最初から3〜5名で並行して試して構いません。

ここで重要なのは、「この検証の責任者は誰か」を最初に1人決めておくことです。責任者が曖昧なまま始めると、何かあったときに全員が「自分の判断ではなかった」と考えてしまい、検証自体が止まります。

② 何を使うか

個人のフリーアカウントではなく、法人向けプラン(ChatGPT TeamやMicrosoft 365 Copilotなど)を使ってください。

無料版や個人アカウントは、入力データの扱いに関する契約上の担保がないため、最初の一歩としては避けるべきです。月額数千円程度のコストは、情報漏えいのリスクを避けるための必要経費と考えてください。

判断の軸:「文章を作る・整理する」ことが目的なら、ChatGPTのような汎用型を選んでください。一方、「Excelの関数を作る」「既存の資料をそのまま編集する」ことが目的なら、普段使っているOffice製品と一体化したCopilotの方が、現場は迷わず使い始められます。すでに使っているツールに近いものほど、定着は早まります。

③ 何を入力していいか/生成物の扱いをどう決めるか

使い方を考える前に、入力してはいけないものを先に決めてください。この順番が逆になると、検証は止まります。

最初のルールは、これだけで構いません。

  • 顧客名・取引先名など、個社を特定できる情報は入れない
  • 契約金額や見積もりの具体的な数字は入れない
  • 人事評価や個人の給与に関する情報は入れない
  • 迷ったら、まず社内の一般的な文章(社内マニュアル、社内向けメールの文面など)で試す

もう一つ、意外と見落とされがちな論点があります。生成された文章や画像を、社外向けの資料やWebサイトにそのまま使ってよいかという点です。

最初の検証段階では、生成物は社内向けの下書きに留め、社外に出す資料は必ず人の目でチェックしてから使う、というルールにしてください。既存の著作物と偶然似た表現が生成されるケースもあるため、「生成された文章をそのまま公開しない」という一線を最初に引いておくだけで、権利侵害のリスクは大きく下がります。

判断の軸(業務の選び方):最初に選ぶ業務は、「間違えても実害が小さく、やり直しがきくもの」に絞ってください。議事録の整理や社内向け文章の下書きは、多少の間違いがあっても大きな問題になりません。一方、顧客への一次対応や契約書の作成、外部公開資料の作成は、最初の検証には向きません。「失敗しても取り返しがつく業務から選ぶ」、これが最初の一歩における唯一の鉄則です。

この4つさえ守れば、最初の検証で情報漏えいや権利侵害が起きる可能性は大きく下がります。

④ どのくらいの期間で区切るか

期間を決めずに始めると、なんとなく続き、なんとなく終わります。「2週間〜1か月」で区切り、終了時に効果を確認する日を先にカレンダーへ入れてください。

判断の軸:対象人数が3〜5名以上なら1か月、経営者や責任者1人だけで試すなら2週間で十分です。人数が少ないほど、判断に必要な情報は早く集まります。

効果が見えなければ、そこで一度やめる。それも正しい判断です。

①〜④を決めても、費用は月数千円、期間は最長1か月です。費用対効果が見えないまま投資が膨らむ、という恐れは、この範囲であれば起こりません。

⑤ 検証環境を、どこまで求めるか

ここまでの内容は、ChatGPT TeamやCopilotといった法人向けプランを前提にしています。ほとんどの企業にとって、最初の一歩はこれで十分です。

一方で、金融機関や医療機関との取引が多い企業、契約上データの外部送信自体に制約がある企業などは、Azure OpenAI Serviceのような、自社専用の検証環境を求められる場合があります。

判断の軸:取引先との契約書やコンプライアンス要件に「クラウドサービスへのデータ送信に関する制限」が明記されているかどうかで判断してください。明記がなければ、まずは法人向けプランで十分です。専用環境の構築は、法人向けプランで効果を確認したあと、必要な範囲だけ検討すれば足ります。最初から専用環境を用意しようとすることが、多くの企業にとって「動けない最大の原因」になっています。


「急いで導入すべき」とは言いません。ただし、この範囲でなら今日から始められます

私たちは、生成AIを急いで全社導入すべきだとは考えていません。

ですが、それは「様子を見ましょう」という意味でもありません。

上記の①〜⑤さえ決めれば、リスクを抑えた範囲での検証は、今日からでも始められます。

「急ぐべきではない」というのは、全社展開やルール整備を急ぐべきではないという意味であって、「小さな検証を始めること」まで先延ばしにする理由にはなりません。

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成果を出している企業が実際に踏んでいる順番

私たちがご支援してきた企業では、このような順番で進めたケースほどAI活用が定着しています。

それは、最初から完璧なルールを作ろうとしていないことです。次のような順番で進めています。

STEP1 責任者と入力禁止項目を決める(1日)

前章の①〜③を、責任者1名のもとで決めます。ここに時間をかけすぎないことがポイントです。

STEP2 3〜5名で2週間〜1か月試す

法人向けプランで、決めた範囲内の業務(メール文面、議事録整理、資料のたたき台作成など)から試します。

STEP3 効果と課題を確認する日を持つ

「時間が減ったか」「使いにくかった場面はどこか」を、責任者と参加メンバーで確認します。ここで効果が見えなければ、無理に広げる必要はありません。

STEP4 効果が見えた業務だけ、社内ルールを整備する

ここで初めて、利用範囲や入力ルールを正式な社内規程として整理します。検証前にルールを作ろうとすると、議論だけで時間が過ぎてしまいます。

STEP5 成果が確認できた範囲から展開する

全社一斉ではなく、効果が確認できた部署・業務から少しずつ広げます。

この順番であれば、「何のためのルールか」が最初から明確なまま進められます。

実際に利用した企業だからこそ見えてくる、現実的な社内ルールの考え方をまとめています。

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目的はAIを使うことではなく、業務を良くすること

生成AIを導入すること自体は目的ではありません。目的は、業務を改善し、企業の成果につなげることです。

STEP3で確認すべき指標は、次のようなものです。

  • 作業時間が短縮できたか
  • 品質が向上したか
  • 社員の負担が減ったか

ChatGPTを毎日使っていなくても、一つの業務で30分の削減ができれば、それは十分な成果です。「使うこと」ではなく「減らせたもの」で判断してください。


AIを活用するなら、「データをどう扱うか」も重要になります

AI活用が進むほど、こうした視点も欠かせません。

  • AIに何を入力してよいのか
  • 自社のデータはどこへ保存されるのか
  • データの主導権は誰が持つのか

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まとめ

半年動けなかった企業に必要なのは、「触ってみよう」という気持ちの切り替えではありません。

責任者を決め、入れてはいけない情報と生成物の扱いを決め、期間を区切ること。そして、それぞれをどんな基準で決めるか。これだけです。

ここまで決まっていれば、あとは実行するだけです。マインドの問題ではなく、設計の問題だったことに気づくはずです。

AI活用が進まない原因は、「AIが難しいこと」ではありません。多くの場合、最初の一歩をどう設計するかが決まっていないことです。


AI活用を「成果」につなげたい企業様へ

AIを導入することが目的ではありません。自社でAIを判断できる組織になることです。

私たちは、その最初の一歩から伴走しています。

オーシャン・アンド・パートナーズでは、

  • 誰が責任者になり、何を検証範囲にすべきか
  • 入力してよい情報・生成物の扱いの線引き
  • 法人向けプランで足りるか、専用環境が必要か
  • ベンダ任せにしない生成AI導入の進め方

など、最初の一歩の設計から、伴走してご支援しています。

「何から始めればよいか分からない」「AIを試してみたが、業務改善につながらない」

そのようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。

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