なぜ家選びでは慎重なのに、ITシステムは丸投げなのか― ITプロジェクトの7割が失敗する、本当の理由 ―

「ITプロジェクトの約7割は失敗する」
――こうした話は、昔から繰り返し語られています。
もっとも、ここで言う失敗は、単純に「システムが完成しなかった」という意味ではありません。
例えば、
- 当初予定より大幅に予算が膨らんだ
- スケジュールが1年以上遅延した
- 現場に定着せず使われなくなった
- 追加改修が止まらなくなった
- ベンダとの関係が悪化した
- 「とりあえず動いているだけ」の状態になった
――こうしたケースも含まれます。
形式上は稼働していても、経営として見れば「成功とは言い難い」プロジェクトは少なくありません。
「完成した=成功」ではない
特にITシステムは厄介です。
家なら、多少の不満があっても住み続けることはできます。
しかしITシステムは、日々の業務そのものに組み込まれるため、使いづらい状態が、そのまま毎日のストレスになります。
その結果、
- Excel運用が復活する
- 二重入力が発生する
- 属人化が進む
- 現場がシステムを避け始める
という、本末転倒な状態も起こります。
しかも損失は、単なる開発費だけでは終わりません。
追加開発、運用負荷、やり直し費用、業務停滞、機会損失――。
億単位のプロジェクトでは、結果的に数億円規模の損失に膨らむケースも現実に存在します。
そして現場では、こんな言葉をよく聞く
ITプロジェクトの初期段階で、発注側から意外なほどよく聞く言葉があります。
「ウチはベンダに任せているので大丈夫です」
「大手ベンダだから安心です」
「専門家にお願いしているので」
もちろん、技術的な実装は専門家に頼るべきです。
しかし、ここで見落とされがちなことがあります。
「任せる」ことと、「判断を放棄する」ことは違う、という点です。
実際、数年後に改めて状況を伺うと、
- プロジェクト打ち切り
- ベンダ撤退
- 大幅な損失計上
- 現場混乱
- 追加投資の継続
という話になるケースは、残念ながら珍しくありません。
では、なぜこうしたことが起きるのでしょうか。
本当の問題は「技術不足」ではない
多くの人は、ITプロジェクトの失敗原因を「技術が難しいから」だと思っています。
しかし現実には、もっと根深い問題があります。
それが、「判断不在」です。
ITプロジェクトでは、常に大量の意思決定が発生します。
- 何を優先するのか
- 何を捨てるのか
- 将来どこまで見据えるのか
- 予算と理想をどうバランスするのか
- 現場運用をどこまで変えるのか
これらは本来、経営判断そのものです。
しかし、「ITは難しい」という心理が働いた瞬間、判断そのものを外部へ委ねてしまうケースが非常に多いのです。
「考える」だけでは足りない
ここで重要なのは、単に”考える”ことではありません。
本当に重要なのは、
「どう判断したのか」を明示すること
です。
例えば、
- なぜこの製品を選ぶのか
- なぜこの費用を許容するのか
- なぜこの運用変更を受け入れるのか
- なぜこのリスクを取るのか
こうした判断を、発注側自身が言葉として示せる状態になっているか。
ここが極めて重要です。
これが曖昧なまま進むプロジェクトは、途中で必ず迷走します。
なぜなら、誰も「何を優先しているのか」を説明できないからです。
家選びなら、こんな任せ方はしない

ここで少し、家選びを想像してみてください。
家を買うとき、人は驚くほど慎重になります。
- 立地
- ローン
- 将来性
- 災害リスク
- 間取り
- 維持費
何度も比較し、家族で議論し、時にはセカンドオピニオンまで取る。
それだけ真剣に考えます。
そして重要なのは、単に「悩む」だけではなく、
「なぜその家を選ぶのか」
を、自分たちなりに判断していることです。
では、住宅会社からこんなことを言われたらどうでしょう。
「細かいことは全部プロに任せてください。こちらで決めておきます」
おそらく、多くの人が不安になるはずです。
しかしITになると、似たようなことが普通に起きています。
- なぜその製品なのか
- なぜその構成なのか
- なぜその費用なのか
- なぜその進め方なのか
十分に理解・整理されないまま、プロジェクトが進んでいく。
これは非常に不思議な現象です。
保険選びでも、人はもっと慎重だ

保険も同じです。
保険は専門用語だらけです。
だからこそ人は、
- 本当に必要なのか
- 何に備えるのか
- 月額負担は妥当か
を考えます。
つまり、「分からないから相談する」という行動を取る。
これは正しい姿勢です。
しかしITでは、いつの間にか「分からないから決めてもらう」になってしまう。
ここに大きな違いがあります。
専門家を頼ることと、判断主体を失うことは違う
もちろん、すべてを自社で理解する必要はありません。
経営者がプログラムを書く必要もありません。
技術そのものは、専門家に頼るべきです。
しかし、
“判断”まで手放してはいけない。
ここが極めて重要です。
専門性を尊重することと、意思決定を他人任せにすることは、まったく別問題です。
経営者や責任者に求められるのは、技術者になることではありません。
最後に、
- 何を選ぶのか
- 何を優先するのか
- どのリスクを受け入れるのか
を判断し、その判断を示すことです。
ITプロジェクトの成功は「判断」で決まる
ベンダに任せること自体が悪なのではありません。
問題なのは、”判断”まで手放してしまうことです。
ITプロジェクトは、単なるシステム開発ではありません。
会社の業務、意思決定、未来の事業構造そのものを形づくる活動です。
だからこそ本来は、「誰が作るか」
以上に、
「誰が判断するのか」
が重要になります。
そして多くの失敗プロジェクトの背景には、技術ではなく、「判断不在」が存在しているのです。
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この記事を書いた人について

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オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事
富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。
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