システムを設計するにあたって超重要な2つの考え方

2019/06/08

いかにお客様にとって有益なシステムを設計するか。これは設計者にとって重要な命題です。
世の中には手法について数々の理論がありますので、それには触れず、本コラムでは、設計者が心得るべき重要な考え方について書いてみました。

 

漠然とした希望にまず輪郭を与えること

設計の行方を左右するのはお客様からの要望です。
そのシステムを使う方たちの意向を抜きに検討は進められません。
お客様の口から語られる問題点やご希望をスマートに整理していくのが設計の最初のヤマ場と言えます。

この時押さえておきたいポイントが一つあります。
「要望は本当に叶えるべきものをよくよく見極めること」

システムづくりはお客様にとって一生に一度あるかないかの大事業です。
あれもこれもと要望を出したくなる気持ちはよく分かります。

ただそれらを一度設計者の手でキレイに濾過しないと「本当はどうしたいのか」は見えてきません。コーヒーの味が抽出のやり方次第で美味くも不味くもなるように、お客様からの要望もポイントをどのように抽出するかで理想のシステムが近づいたり遠のいたりするのです

お客様から山のように出てくる要望は、問題の根幹を軸に整理していくと見通しが良くなります。
根幹をもとに分類することでお客様が望んでいるシステム全体のイメージや将来の利用像に一本筋が通ってくるのです。

これが後々設計の方向性を決める太い柱になるのです。

問題解決に有益なシステムに唯一無二の正解はなく、企業の数だけ正解があると考える

システムをつくるという所業は、お客間が抱えられる諸々の問題と対峙する設計者のあくなき闘いでもあります。
ちなみに世の設計者はお客様から依頼されたシステムを素早く確実に完成させる方法はないものかと思案します。

その答えの一つがパッケージ製品です。

パッケージ製品では必要なパラメータを入れれば綺麗に整った仕組みが自動的に出来上がります。ただいかんせんこの方法には一つ致命的な弱点があります。

不特定多数の企業を対象に作られるパッケージというフォーマットは不特定多数が前提となるだけに、特定の企業を満足させる魅力的なシステムには到底なり得ないのです。

最初から答えが分かっていれば簡単ですが、例えば「数学で大切なのは答えではなく、その問題をどのように解いたかという計算過程である」のと同様に「なぜこのような設計にするのか」というそのお客様企業ならではの解決策が検討されてなければ、システムとしての有益性は全く発揮されてきません。

システムは、その設計過程において与条件をどのように解いたかという個別のストーリーがあって初めてお客様企業にとって有益になります。 つまり、お客様の問題解決に有益なシステムに唯一無二の正解などありません。システムは企業の数だけ正解があるともいえるのです。

パッケージという武器を持っている人が、あらかじめ「答え」を持ち備えた人だとすれば、非パッケージでゼロからアプローチする設計者は最初は「答え」を持ちません。お客様が抱えている症状がどのようなものであっても自分が持っているパッケージで解決しようとする人とは対照的です。だからこそ、お客様が抱えておられる根本の問題を探り出すことが重要であると考えます。そのためにお客様と真摯と向き合って、根本の問題に迫るのです。

そして問題と格闘するという考え方が重要と筆者は考えます。手先の方法論だけに走るのではなく、根っ子に持つべき姿勢について述べてみました。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。