システム開発とは何か?をビジネス側の人にも分かりやすく解説

2019/09/26

ほとんどの企業は情報システムに依存している

いまや企業規模の大小や事業内容によらず、ITは経営の屋台骨であると言われています。
ITの優劣が、その企業における事業スピードや生産性、収益力など、経営のありとあらゆる要素に関わるということです。

企業の中で働いている人がコンピューターのモニター画面を見ながら過ごしている時間をカウントしたという実験データがあります。
内勤スタッフの場合は、全勤務時間のうち会議/休憩時間以外のほとんどをパソコンのモニター画面を見て過ごすようなのです。
営業マンの場合でさえも顧客との面会時間と移動時間、社内会議以外のほとんどは、パソコン画面を見ているそうです。その時間を1ヶ月の間、出社時間から退社まで数えたところ、実に全勤務時間の半分以上の時間コンピュータに触れているという結果が出ました。

このデータが表すのは、企業の事業属性が、ITか非ITか、デジタル事業かアナログ事業か、ベンチャーか老舗か、によらず、仕事に携わっている時間の多くはコンピューターに関わっているということです。
つまり、どのような事業を営んでいるにせよ、ほとんどの企業はITに依存しているのです。

そして、このような企業がITを良くしようとしたときに「システム開発」という機会に出食わすことは少なくありません。
その一方で会社員人生のなかでそう何度も経験することも無いでしょう。
それゆえに、この「システム開発」というワードは捉えどころがなく、イメージが人によって様々です。

そこで今回はビジネス系の方向けに「システム開発とは何か?」について書いてみます。

システム開発の命題は経営課題の解決や売上利益への貢献である

まず「システムとは何か」ですが、継続的に成果を導くための「仕組み」です。
その定義に沿うとシステム開発は「様々なIT技術を組み合わせて継続的に成果を導くための仕組みをつくる」ということになります。
ただ何かの道具を買うことではなく、組織の業務に大きく関わることであり、経営課題の解決や売上/利益への貢献が命題になるものといえるでしょう。

冒頭で、企業の中に居る人は、その勤務時間の多くをITに触れて過ごすと指摘しました。さらに外出中にスマホで社内システムにアクセスしている時間を加えると、もっと多くの時間をITと関わって過ごすことになります。そこでシステム開発で機能改善して今まで1人あたり月30時間かかっていた残業が10時間で済むようになったとします。その場合、仮に社員数300名の企業だとすれば年間72,000時間の削減です。浮いた残業費から利益留保したり、節約できた時間で、顧客と会う時間を増やしたり、人員配置を最適化することができます。これは守りの効果といえます。

しかし守りだけでは競争に勝つことはできません。サッカーで例えるとゴール前のディフェンスを固めれば点を入れられないかも知れませんが攻めないと勝負には勝てない、それと同じで攻守のバランスが大切です。ITにおける攻めのキーワードは情報の即時性です。

世の中で発生した事象の変化をA社とB社が同時に現場で捉えたとしましょう。現場というのは店頭や営業担当者かも知れませんし、それ以外の外部との接点かも知れません。A社とB社は環境変化を受け止め、何らかの意思決定を行うでしょう。このとき、どちらが有利でしょうか?現場で捉えたデータを収集、加工して意思決定者に届くまでのプロセスが速いほうが有利です。様々な分野で競争が激しくなるほど、意思決定や行動の質が問われます。これらの質を決定する要素としてスピードは重要なのです。

またオンラインショッピングを思い浮かべると分かりますが、いまではユーザーは欲しいものをその場で購入でき、同時に決済もできます。以前は在庫確認のために購入が決定するまで1日程度の時間がかかることも珍しくありませんでした。ビジネス分野では多くの業務で即時性が求められるようになっているのです。

システム開発の流れ

次にシステム開発が進む流れは大雑把に次のとおりです。

1. どのようなシステムが必要なのか調査する
2. 調査に基づいて要件を定義する
3. デザイン・機能を設計する
4. プログラムを書く
5. 定義したとおりに動くか、運用できるかをテストする

上記のプロセスのうちビジネス側の人が関わるのは、主に1、2、5番となります。
3、4番はシステムベンダが主体となって行います。

まず、どのようなシステムが必要なのか調査するのが一番初めのフェーズです。
何を開発すれば経営課題が解決されるか、その武器がITであるわけですから、ITを良く分かっている人、すなわちからシステムベンダやコンサルタントの支援を受けながら行うのが一般的です。

その後、要件の定義や設計と進んでいきます。狭い分野の技術ではおそらく太刀打ちできず、先端技術からインフラ基盤、プロジェクトマネジメントまで幅広い知識が必要となり、そのような力を備えたシステムベンダやコンサルタントとの二人三脚の作業になります。特に経営側の思考でどのようにIT投資していくか、ビジョン作りから要求仕様、ベンダーとの打ち合わせまで仕事は多岐に渡ります。
参考URL:システム開発の進め方【企業のシステム発注担当者向け解説】

システム開発ははかなり骨が折れる作業の連続というのは何となくお判りでしょう。
しかし成功すれば企業は多くの利益を手にするわけですから経営側の期待度が高いのも当然と言えます。

経営陣からシステム開発の責任者を任命されるということは、企業人にとって鬼門であり、出世の登竜門でもあるのです。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。