クラウド移行とは?メリットやオンプレミスとの違いクラウド移行の方法について徹底解説!

現在、テレワークの普及や業務効率化のニーズが高まり、クラウド移行を検討している企業が増えています。しかし、「クラウド移行をしたらどんなメリットがあるのか」「オンプレミスとどう違うのか」といった疑問を抱えている企業も少なくありません。
そこで、この記事では、クラウド移行の基礎から具体的なメリット・デメリット、移行の判断基準や方法まで、企業が知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。自社のIT戦略を見直すきっかけとして、ご活用いただければ幸いです。
▼オンライン相談会も実施中!詳しくは下記からお問い合わせください▼
目次
クラウド移行とは?

クラウド移行とは、企業が自社で管理していたサーバーやネットワーク、アプリケーション、データなどのIT資産を、インターネット経由で利用できるクラウドサービスへ移すことを指します。
従来のオンプレミス環境では、サーバーの設置や維持管理、専門知識が必要でした。しかし、クラウド化をすれば、必要な時に必要な分だけリソースを柔軟に利用できるようになります。近年は特に、テレワークの普及や業務効率化の流れを受けて、クラウド移行を進める企業が増加傾向にあります。
クラウド移行は、単なるシステムの置き換えではなく、コスト削減や運用負担の軽減、事業継続性の強化といった経営課題の解決にもつながる重要なIT戦略の一つに位置づけられています。効果的に実施することで、経営に大きなプラスとなるでしょう。
クラウドとオンプレミスの違い

「クラウド」と同じようにITシステムを運用する形態に「オンプレミス」があります。クラウドが普及するまで、企業のITシステムはオンプレミス型システムで成り立っていました。正しくクラウド移行のメリットを知るためにも、まずはこれら2つの違いを理解しておきましょう。
オンプレミスとは、自社内にサーバーやネットワーク機器、アプリケーションを設置し、すべてを自社で保有・運用する従来型のシステム形態のことです。セキュリティやカスタマイズ性の高さが特徴ですが、設備投資や維持管理に多くのコストや専門知識が必要となります。
一方、クラウドはインターネットを通じて外部のサービス事業者が提供するインフラやソフトウェアを利用する形態を指します。自社でハードウェアを用意する必要がなく、必要に応じてリソースを増減できるため、初期投資や運用負担を大幅に軽減できます。また、クラウドは場所を問わずアクセスが可能なため、テレワークや多拠点展開にも柔軟に対応できる点が大きな魅力です。
このように、クラウドは「必要なときに必要な分だけ使う」ことができる一方、オンプレミスは「自社で全てを所有・管理する」方式です。企業の規模や業務内容、求めるセキュリティレベルによって、最適な選択肢は異なりますが、近年はクラウドの利便性やコストメリットを重視して移行を進める企業が増えています。
クラウド移行をする6つのメリット

上記でお話したように、クラウド移行は、近年多くの企業が注目しているIT戦略の一つとなっています。従来のオンプレミス型システムと比較して、クラウドへ移行することで得られるメリットは多岐にわたります。ここでは、クラウド移行を検討している企業が知っておきたい6つの主なメリットについて、詳しく解説していきます。
コスト削減や業務効率化、災害対策など、企業活動に直結するポイントを中心にご紹介しますので、ぜひ自社のIT環境改善にお役立てください。
①コストを抑えられる
クラウド移行の大きなメリットの一つは、コストの最適化が図れる点です。
オンプレミスではサーバやネットワーク機器の購入、設置、保守といった初期投資が必要ですが、クラウドではこれらの設備投資が不要です。さらに、クラウドは従量課金制が一般的で、利用した分だけ費用が発生するため、無駄なコストを抑えることができます。
運用・保守にかかる人件費や電気代も削減できるため、トータルでのコストダウンが期待できるでしょう。
コスト削減について気になる方はこちら
ITコスト削減の5つの方法を解説!
②導入リードタイムの短縮と負荷削減ができる
クラウドサービスは、インターネット経由で必要なリソースをすぐに利用できるため、システム導入までのリードタイムを大幅に短縮できます。
オンプレミスの場合は、サーバの調達や設置、ネットワーク構築など多くの工程が必要ですが、クラウドではその手間が省けます。これにより、システム担当者の業務負荷も軽減され、スピーディーなサービス開始が可能となるでしょう。
③システム担当の負担軽減につながる
クラウド移行は、システム担当の負担軽減につながることも大きなメリットです。
クラウドでは、サーバやストレージの管理、ソフトウェアのアップデート、バックアップなどの運用管理をクラウド事業者が担うため、社内のシステム担当者は日々の煩雑な作業から解放されることになります。余ったリソースをより付加価値の高い業務に割けるようになるため、企業としてもプラスに働くことが予想されます。特に、専任担当者が少ない中小企業にとっては、大きなメリットとなるはずです。
④物理的な障害対応をクラウド事業者に任せられる
クラウドによるIT管理者の負担軽減に関しては、他にも「障害対応が事業者側に任せられる」というメリットがあります。
オンプレミス環境では、サーバーやハードウェアに障害が発生した場合、社内の担当者が迅速に対応しなければなりません。しかし、クラウド環境ではこうした物理的な障害対応をクラウド事業者が担うため、24時間365日の監視や障害時の対応も事業者側に任せることができます。
これにより、IT管理者の精神的肉体的負担も大きく軽減されるため、安心してシステム運用に専念することができるでしょう。
⑤容量の拡張や負荷分散が柔軟に対応できる
クラウドの強みに、必要に応じてリソースの拡張や縮小が柔軟にできるという点も挙げられます。
オンプレミスで容量を増やす場合は、ハードウェアの追加や設定変更が必要ですが、クラウドの場合は契約内容を変更するだけですぐに対応することが可能です。アクセス集中時の負荷分散も自動的に行われるため、安定したサービスの利用が可能になるでしょう。
⑥BCP対策が実現できる
クラウド移行した場合、災害や障害に強いシステムを構築できることも大きなメリットでしょう。
クラウド事業者は、複数拠点にデータセンターを持ち、データの分散保管や強固なセキュリティ対策を実施しています。これにより、災害や障害が発生した場合でも、データの消失リスクを最小限に抑えることができます。
オンプレミスで同等のBCP(事業継続計画)対策を講じるには莫大なコストがかかりますが、クラウドなら効率的かつ経済的にBCPを実現できるでしょう。
クラウド移行をする4つのデメリット

クラウド移行は多くの企業にとってコスト削減や業務効率化などの大きなメリットをもたらしますが、注意しなければならないデメリットも存在します。
クラウドサービスはインターネットを前提とした仕組みであり、オンプレミス環境とは異なる特性を持っています。そのため、移行を検討する際には、デメリットを十分に理解し、自社の業務やシステムとの相性を見極めることが重要です。ここでは、クラウド移行を進める上で知っておきたい4つの主なデメリットについて解説します。
①インターネット接続が必須
クラウドサービスはインターネットを介して利用する仕組みのため、常に安定したインターネット接続が必要です。
もし通信障害やネットワークトラブルが発生した場合、業務システムへのアクセスができなくなり、業務が一時的にストップしてしまうリスクがあります。特に、ネットワークインフラが十分に整備されていない地域や、災害時の通信断などが想定される場合は、この点が大きな課題となるでしょう。
オンプレミス環境であれば社内ネットワークのみで運用できるため、インターネット接続の有無に左右されにくいという違いがあります。
②オンプレミスに比べてカスタマイズ性が低い
クラウドサービスは多くのユーザーが共通のプラットフォームを利用するため、サービス提供側が定めた仕様や制約の範囲内でしかカスタマイズできません。
オンプレミス環境では自社の業務プロセスや要件に合わせて細かな調整や独自開発が可能ですが、クラウドではこうした柔軟性が制限される場合が多いです。特に、特殊な業務フローや既存システムとの深い連携が求められる場合は、思い通りのカスタマイズができないことがデメリットとなるかもしれません。
③オンプレミス環境とは異なったセキュリティ対策が必要
クラウドはインターネット経由でアクセスできるため、オンプレミスとは異なるセキュリティリスクに備える必要があります。
例えば、外部からの不正アクセスやデータ漏洩、アカウントの乗っ取りなど、クラウド特有の脅威に対応したセキュリティ対策が重要になってきます。従来の社内ネットワーク中心のセキュリティ対策だけでは不十分となるため、クラウド環境に適したアクセス制御や暗号化、監査ログの管理などが求められるでしょう。
④自社システムとの連携に対応していない可能性がある
クラウドサービスは標準的な機能やインターフェースが提供されている一方で、既存の自社システムと完全に連携できない場合があります。特に、古いシステムや独自仕様のアプリケーションを利用している場合、クラウドサービス側が提供するAPIや連携機能が対応していないことも考えられます。
そのため、移行前に十分な検証や事前調査を行い、必要に応じてシステムの改修や追加開発を検討する必要があるでしょう。
クラウド移行の方法

クラウド移行を検討する際には、既存システムの特性や事業の要件に合わせて最適な移行方法を選ぶことが重要です。クラウド移行にはさまざまなアプローチがありますが、特に「5R」と呼ばれる代表的な5つの手法が広く知られています。
それぞれの特徴を理解し、自社のシステムや業務に最適な方法を選択することで、移行後の運用効率やコストパフォーマンスを最大化できるでしょう。ここで詳しく解説していきます。
Revise(リバイズ)
Revise(リバイズ)は、既存システムのアーキテクチャを大きく変えずに、必要な部分だけを修正・最適化してクラウドへ移行する方法です。
例えば、ソースコードの一部を修正したり、ミドルウェアのバージョンをアップデートしたりすることで、クラウド環境に適合させていきます。
この手法は、現行システムの基本的な構造や機能を維持しつつ、クラウドの利点を部分的に取り入れたい場合に有効です。移行の手間やコストを抑えながら、クラウドの柔軟性や拡張性を享受できる点が魅力と言えるでしょう。
Rebuild(リビルド)
Rebuild(リビルド)は、既存のアプリケーションをゼロからクラウドネイティブなアーキテクチャで再構築する方法です。
例えば、従来のオンプレミス用アプリケーションを、クラウドサービスに最適化された形で新規開発します。
サポート切れや老朽化したシステムの刷新、あるいは業務要件の大幅な変更が求められる場合に適しています。初期投資や開発工数は大きくなりますが、将来的な運用コスト削減やパフォーマンス向上、最新技術の活用といった長期的なメリットが期待できるでしょう。
Replace(リプレイス)
Replace(リプレイス)は、既存のアプリケーションやシステムを廃止し、SaaS(Software as a Service)やDaaS(Desktop as a Service)などのクラウドサービスへ置き換える方法です。
例えば、オンプレミスで運用していた営業支援システムをSalesforceやkintoneなどのクラウドサービスに変更するケースが該当します。
新しいシステムへの移行は比較的迅速に行えますが、ユーザーが新しいインターフェースや操作方法に慣れるための教育コストが発生することもあります。とはいえ、システムの運用負荷や保守コストを大幅に削減できる点が大きなメリットです。
Rehost(リホスト)
Rehost(リホスト)は、「リフトアンドシフト」とも呼ばれ、既存のアプリケーションやデータベースをほぼ変更せず、そのままクラウド環境に移行する手法です。
システムの構造やコードに手を加えないため、移行作業が比較的短期間で済み、コストも抑えやすいのが特徴です。クラウドの専門知識がなくても対応しやすい方法ですが、クラウド特有の機能やメリットを十分に活かしきれない場合もあるため、移行後の最適化を検討することが望ましいでしょう。
Refactor(リファクタ)
Refactor(リファクタ)は、既存システムのアーキテクチャやアプリケーションの仕様を見直し、クラウド環境に最適化するためにソースコードやインフラ構成を大幅に修正する方法です。
例えば、ロードバランサやサーバレスアーキテクチャなど、クラウド独自の機能を積極的に取り入れることで、パフォーマンスや可用性の向上を図ります。
移行の難易度やコストは高くなりますが、長期的にはクラウドの強みを最大限に活かし、運用効率や拡張性を大きく向上させることが可能です。
基幹システム再構築について知りたい方はこちら
基幹システム再構築の成功法則大全
クラウド移行をした方が良いシステムの判断方法

クラウド移行を検討する際、どのシステムを移行すべきかを見極めることは非常に重要です。
まず、既存システムの老朽化や運用コストの増加が課題となっている場合は、クラウド移行によるコスト削減や運用負担の軽減が期待できるでしょう。また、ビジネスの成長に合わせて柔軟にシステム拡張が必要な場合や、災害対策・BCP(事業継続計画)を強化したい場合も、クラウドの特性が大きなメリットとなります。
さらに、リモートワークの普及など働き方の変化に対応するため、社外からのアクセス性を高めたい場合にもクラウド移行は有効です。
逆に、レガシーな独自システムや高いカスタマイズ性が求められる場合は、移行の難易度やコストを十分に検討する必要があります。システムごとに現状の課題や将来の運用方針を整理し、クラウド移行の効果が最大化される領域を見極めてください。
クラウド移行の手順

ここまで、クラウド移行のメリットやクラウド移行の方法、クラウド移行をした方が良いのか見極める方法について解説してきました。
多くのメリットが得られるクラウド移行ですが、成功させるためには計画的に段階を踏んで導入することが重要です。そこで、最後に計画段階やクラウド選定、切り替えなど具体的な手順を6つのステップに分けてご紹介します。ぜひ参考に、導入のイメージを掴んでみてください。
①課題を把握し予算やスケジュールを決定する
まずは、現状のシステム運用で直面している課題を明確にし、クラウド移行によって何を解決したいのかを整理しましょう。例えば、老朽化したシステムの刷新や運用コストの削減、業務効率化など、目的を具体的に設定することが重要です。
同時に、移行に必要な予算やスケジュールも具体的に設定することも大切です。予算の見積もりだけでなく、移行にかかる工数やリソースも事前に把握しておくことで、後からのトラブルを防げます。
経営層や関係部門と連携し、全体方針を固めておくことで、プロジェクトの進行がスムーズになるでしょう。関係者の合意形成を図り、移行後の運用体制も見据えて計画を立ててください。
②情報資産の棚卸しを行う
次に、社内に存在する情報資産の洗い出しを行います。
システムやデータベース、アプリケーションごとに、利用状況や重要度、依存関係を細かく整理し、どの資産をクラウドへ移行するかを判断してください。業務に不可欠なシステムや今後も利用が見込まれる資産を優先的にリストアップすることで、移行の計画が立てやすくなります。
この段階で不要なシステムやデータの整理も進めておくと、移行後の運用が効率的になります。情報資産の可視化は、セキュリティ対策やコスト管理にも役立つため、丁寧に進めましょう。
③移行の優先順位付けを行う
すべてのシステムを一度に移行するのは現実的ではありません。移行対象が多い場合は、業務への影響度やシステムの重要度、移行の難易度などを基準に、優先順位を明確にしましょう。
特に、業務に直結するシステムや早期に効果が見込めるものから段階的に移行を進めることで、リスクを最小限に抑えることができます。優先順位をつける際には、関係部門との調整や業務スケジュールも考慮し、現場の声を反映させることが重要です。段階的な移行により、トラブル発生時の影響も限定的にでき、全体の移行成功率が高まります。
④クラウドの選定とアーキテクチャの検討を行う
クラウドサービスにはさまざまな種類や提供事業者があります。サービスの特性や自社の業務要件に合わせて最適なクラウドを選定しましょう。自社の要件や予算、セキュリティポリシーに合致したクラウドを選定し、最適なアーキテクチャを設計してください。
クラウド選定時には、将来的な拡張性や運用コスト、サポート体制も比較検討することが大切です。また、既存システムとの連携や将来的な拡張性も考慮した設計が重要です。アーキテクチャ設計の段階で専門家の意見を取り入れると、より安定した運用が実現できます。
⑤移行計画を経てリハーサルを行う
移行計画を策定したら、実際の移行作業に入る前にリハーサル(テスト移行)を実施します。
リハーサルでは、移行手順や作業工程を本番さながらに再現し、問題点や課題を事前に洗い出しましょう。これにより、実際の移行時に発生し得るトラブルや課題を事前に把握し、対策を講じることができます。
リハーサルで得られたフィードバックをもとに計画を見直すことで、移行の精度が向上します。関係者との連携や業務影響の確認もこの段階で徹底しましょう。テスト環境での十分な検証が、スムーズな本番移行につながります。
⑥システム切り替えを行う
リハーサルで得られた知見をもとに、いよいよ本番環境への切り替えを実施します。
本番移行時には、事前に決めたスケジュールに従い、関係者が連携して作業を進めることが重要です。切り替え時には、業務への影響を最小限に抑えるためのスケジュール調整や、トラブル発生時の対応体制を整えておくようにしましょう。
移行後も運用状況を継続的にモニタリングし、必要に応じて改善を図るのも大事です。切り替え後は、ユーザーからの問い合わせ対応やシステムの安定稼働を確認し、万全のサポート体制で運用を開始できるよう心がけてください。
クラウド移行でお困りなら専門業者への依頼がおすすめ

この記事では、クラウド移行がどのようなものなのか、メリットやデメリット、具体的な移行方法やクラウド移行がすすめられる環境や導入ステップを具体的に解説しました。
クラウド移行は、コスト削減や業務効率化、BCP対策など、企業の成長と安定運用を支える多くのメリットがあります。一方で、インターネット接続の必須化やカスタマイズ性の制限など、注意すべきデメリットもあるため、自社の現状や将来像を見据え、最適な移行方法や手順を検討することが重要です。
クラウド移行をお考えの企業様には、オーシャン・アンド・パートナーズのサービスがおすすめです。豊富なクラウド導入実績と知見を活かし、最適なクラウド選定から設計、導入、移行までをワンストップでサポートしています。コスト削減や運用効率化、セキュリティ強化など、御社の課題に合わせて最適なご提案をいたします。具体的なサービスの詳細は下記をご確認ください。
▼オンライン相談会も実施中!詳しくは下記からお問い合わせください▼
この記事を書いた人について

-
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社
一児の母として子育てに奮闘しながら、オーシャン・アンド・パートナーズの代表者および技術チームメンバーの補佐に従事。
実務の現場に寄り添い、日々の会話や支援を通して見えてきた“リアル”を、等身大の視点でお届けしています。