アーキテクチャ設計とは?進め方やポイントについて徹底解説!
システム開発において、アーキテクチャ設計は成功の鍵を握る重要な工程です。アーキテクチャ設計とは、サーバーやソフトウェア、ネットワークなどの構成要素を組み合わせて、システム全体の設計方式や実現構造を決定することを指します。適切なアーキテクチャ設計により、システムの品質と開発効率が向上します。
本記事では、アーキテクチャ設計の基本概念から具体的な進め方、主要な種類まで、初心者にもわかりやすく解説していきます。
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目次
アーキテクチャ設計とは?
アーキテクチャ設計とは、システム全体の構造や構成要素の関係性を定義する設計工程のことです。建築におけるアーキテクチャと同様に、システムの「骨格」となる部分を決定する重要な作業になります。
具体的には、システムを構成する各コンポーネントの役割分担、データの流れ、インターフェースの定義などを行います。この設計により、システムの品質特性である性能、可用性、保守性、拡張性といった非機能要件を満たすことが可能になるでしょう。
適切なアーキテクチャ設計は、プロジェクトの成功を左右する重要な要素であり、後の開発工程すべてに影響を与えます。
基本設計との違い
アーキテクチャ設計と基本設計は、しばしば混同されがちですが、明確な違いがあります。アーキテクチャ設計は、システム全体の構造や方針を決定する上位概念の設計です。一方、基本設計は、アーキテクチャ設計で決定された方針に基づいて、具体的な機能やインターフェースを詳細に設計する工程になります。
アーキテクチャ設計では「どのような技術スタックを使用するか」「どのようなパターンでシステムを構成するか」といった大枠を決定します。基本設計では「各画面の項目や処理フロー」「データベースのテーブル構造」などの具体的な内容を決定するのです。
つまり、アーキテクチャ設計は基本設計の前段階で行われ、システム全体の方向性を決定する重要な工程と言えるでしょう。両者は密接に関連しており、適切なアーキテクチャ設計があってこそ、効果的な基本設計が可能になります。
また、アーキテクチャ設計では将来の拡張性や変更要求への対応も考慮し、柔軟性を持った設計を行うことが求められます。
主なアーキテクチャの種類とは?それぞれの特徴を紹介!
システムの規模や複雑さ、業務要件によって適切なアーキテクチャは大きく変わります。単一のアーキテクチャだけでなく、複数のアーキテクチャを組み合わせることで、より効果的なシステム構築が可能になります。
アーキテクチャの選択は、技術的な側面だけでなく、組織の体制や開発チームのスキルレベルも考慮する必要があります。現代のシステム開発では、クラウド技術の普及により多様な選択肢が生まれており、それぞれの特徴を理解することが重要です。
システムアーキテクチャ
システムアーキテクチャは、システム全体の構造や各サブシステム間の関係を定義するアーキテクチャです。レイヤードアーキテクチャ、マイクロサービスアーキテクチャ、SOA(Service Oriented Architecture)などが代表的な例になります。
レイヤードアーキテクチャでは、プレゼンテーション層、ビジネスロジック層、データアクセス層に分離して設計します。各層の責任範囲が明確になり、保守性が向上するでしょう。マイクロサービスアーキテクチャでは、機能ごとに独立したサービスとして構築し、スケーラビリティと開発の柔軟性を実現します。
システムアーキテクチャの選択は、システムの性質や要件に大きく左右されるため、慎重な検討が必要です。
近年では、クラウドネイティブな設計も重要視されており、コンテナ技術やオーケストレーションツールを活用した設計が主流となっています。
データアーキテクチャ
データアーキテクチャは、データの構造、流れ、格納方法を設計するアーキテクチャです。データベース設計、データウェアハウス設計、データレイク設計などが含まれます。適切なデータアーキテクチャにより、データの整合性確保と効率的なデータ処理が可能になるでしょう。
データの正規化や非正規化の判断、パーティショニング戦略、レプリケーション方式など、データの特性に応じた設計が求められます。また、データガバナンスの観点から、データの品質管理やアクセス制御も重要な要素となります。
近年では、ビッグデータやリアルタイム処理に対応するため、従来のリレーショナルデータベースに加えて、NoSQLデータベースやストリーミング処理基盤を組み合わせる設計が増えています。データアーキテクチャの設計では、データの機密性や可用性も重要な考慮事項になるでしょう。
データライフサイクル管理やバックアップ戦略も含めた包括的な設計が求められます。
システム基盤アーキテクチャ
システム基盤アーキテクチャは、システムを支える基盤技術の構成を設計するアーキテクチャです。サーバー構成、ネットワーク構成、セキュリティ設計、運用設計などが含まれます。クラウドサービスの普及により、従来のオンプレミス環境だけでなく、クラウドやハイブリッド環境での設計も重要になっています。
可用性を確保するための冗長化設計、負荷分散設計、災害対策設計などが主要な要素になります。また、監視・ログ管理、バックアップ・リカバリ、パフォーマンス管理といった運用面の設計も欠かせません。システム基盤アーキテクチャの設計では、コストと性能のバランスを考慮することが重要です。
インフラストラクチャ・アズ・コード(IaC)の活用により、基盤の構築と管理の自動化も可能になり、運用効率の向上が図れます。セキュリティ設計では、ゼロトラストアーキテクチャの考え方も取り入れ、多層防御による堅牢なシステム構築が求められるでしょう。
プログラムアーキテクチャ
プログラムアーキテクチャは、アプリケーションの内部構造を設計するアーキテクチャです。MVC(Model-View-Controller)パターン、MVP(Model-View-Presenter)パターン、MVVM(Model-View-ViewModel)パターンなどの設計パターンが活用されます。
プログラムアーキテクチャでは、クラスやモジュールの分割方法、依存関係の管理、コードの再利用性を考慮した設計が行われます。適切なプログラムアーキテクチャにより、コードの可読性と保守性が向上し、開発効率が大幅に改善されるでしょう。また、テストの容易性も重要な要素であり、テスト駆動開発(TDD)やドメイン駆動設計(DDD)といった手法と組み合わせることで、より高品質なアプリケーションを開発できます。
近年では、関数型プログラミングの考え方や、リアクティブプログラミングのパラダイムも取り入れられており、より柔軟で保守性の高いアーキテクチャが求められています。コードの品質向上のため、静的解析ツールやコードレビューの仕組みも設計に含めることが重要です。
アーキテクチャ設計の進め方を徹底解説!
設計プロセスでは、要件の理解から実装の検証まで、段階的に詳細化していくことが重要です。
体系的なアプローチにより、品質の高いアーキテクチャを効率的に構築できます。以下では、実践的な進め方について詳しく解説します。各段階での成果物や注意点も含めて、具体的なアプローチを説明していきます。
プロジェクトの特性に応じて、これらの手順を適宜調整することも必要でしょう。また、アジャイル開発では反復改善が重要です。
要求事項を整理する
アーキテクチャ設計の第一歩は、要求事項の整理です。機能要件と非機能要件を明確に分離し、それぞれを詳細に分析します。機能要件では、システムが提供すべき機能や処理内容を整理し、非機能要件では、性能、可用性、セキュリティ、保守性などの品質特性を定義します。
ステークホルダーとの十分な議論を通じて、要求事項の優先順位を明確にすることが重要です。また、将来の拡張性や変更可能性も考慮に入れる必要があるでしょう。要求事項の整理では、曖昧な部分や不明な点を残さず、具体的で測定可能な形で文書化することが求められます。この段階での不備は、後の設計工程に大きな影響を与えるため、慎重に進めることが大切です。
コンポーネント要件を検討する
要求事項が整理されたら、次にコンポーネント要件の検討を行います。システムを構成する各コンポーネントの役割、責任範囲、インターフェースを定義します。コンポーネント間の依存関係を最小限に抑え、疎結合な設計を心がけることが重要です。
各コンポーネントの粒度や境界の設定は、システムの保守性や拡張性に大きく影響するでしょう。ドメイン駆動設計の考え方を取り入れ、ビジネスロジックを中心とした境界設定を行うことで、より理解しやすいアーキテクチャを構築できます。また、コンポーネント間の通信方式(同期・非同期、プロトコル)についても、この段階で検討が必要です。
アーキテクチャを細分化する
コンポーネント要件が固まったら、アーキテクチャの細分化を進めます。各コンポーネントの内部構造を詳細に設計し、クラス図やシーケンス図を作成します。データフローやコントロールフローを明確にし、エラーハンドリングや例外処理についても検討します。
細分化では、設計パターンの活用が効果的です。Singletonパターン、Factoryパターン、Observerパターンなど、適切なパターンを選択することで、再利用性と保守性を向上させることができるでしょう。また、フレームワークやライブラリの選定も、この段階で行われます。
技術選定では、コミュニティの活発さや長期的なサポート体制も考慮することが重要です。
プロトタイプを構築する
アーキテクチャの細分化が完了したら、プロトタイプの構築を行います。プロトタイプは、設計の妥当性を検証し、技術的な課題を早期に発見するための重要な工程です。全機能ではなく、主要な機能やリスクの高い部分に絞って構築することが効率的でしょう。
プロトタイプの構築では、性能測定やセキュリティテストも併せて実施します。想定した性能が出ない場合は、アーキテクチャの見直しが必要かもしれません。また、開発チームにとって新しい技術や手法が含まれている場合は、学習コストや開発効率についても評価を行います。
プロトタイプの結果を基に、必要に応じてアーキテクチャの修正を行うことが重要です。
非機能要件を定義・数値化する
最後に取り組むのが、非機能要件の定義とその数値化です。性能面では、レスポンス時間・スループット・同時接続数などを具体的に設定し、可用性に関しては、稼働率やRTO(Recovery Time Objective)、RPO(Recovery Point Objective)といった指標を用いて明確にします。
セキュリティ要件では、認証や認可の方式、暗号化手法、アクセス制御の仕組みなどをあらかじめ定めておく必要があります。さらに、保守性については、コードの複雑度やモジュールの結合度を評価基準とし、開発・運用にかかるコストの見積もりにつなげていきます。
こうした非機能要件は、システムの品質を左右する重要な要素です。機能要件に比べて軽視されがちですが、プロジェクトの成否に直結する領域といえるでしょう。
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アーキテクチャ設計は、システム開発の成功を左右する重要な工程です。しかし、適切な知識と経験がなければ、効果的な設計を行うことは困難でしょう。オーシャン・アンド・パートナーズでは、豊富な実績と専門知識を持つエンジニアが、お客様のアーキテクチャ設計を全面的にサポートします。
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この記事を書いた人について

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オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事
富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。