ITシステム構築・開発の4つの方法と工程を解説！製造業とのアプローチの違いとは？

2024/07/02

企業の経営者や事業責任者にとって、ITシステムの再構築は非常に重要な課題です。しかし、そのプロセスを製造業や建築建設業のように捉えると、プロジェクトは失敗に終わる可能性があります。製造業の成功体験をベースに、ITシステム構築にアプローチする企業が多いですが、これが問題を引き起こす要因となり得るのです。

本稿では、ITシステム構築と製造業アプローチの違いに焦点を当て、成功するための戦略を探ります。

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目次 [非表示]

1 1.はじめに
2 2.ITシステム構築と製造業の違い
3 3. ITシステム構築を「設計業」として捉える視点
4 4. ITシステム構築・開発の4つの方法
5 5. ITシステム構築・開発の工程
6 ITシステム構築の成功ならオーシャン・アンド・パートナーズへ

1.はじめに

コンサルタントの立場で企業の方々とお話ししていると、システム構築が思うように進まず、不満の声が上がるケースに度々直面します。

特に製造業や建築建設業の関係者からは、システムベンダーに対する強い不満が聞こえてきます。製造業であれば、製造仕様に従って詳細な手順を経てプロダクトが完成するのが常識です。建築や建設業でも、図面に詳細に記された部品や建て付けに基づき、お客様が納得の上でその通りに仕上がるのが自然な期待です。

しかし、同じ期待を持ってシステム開発に臨むと、しばしばその常識が通じず、結果として「非常識だ」と憤られることが少なくありません。このような不満の背景には、システム開発と製造業・建設業との本質的な違いが潜んでいます。

そこで本稿では、システム開発の特異性と、製造業や建設業とのアプローチの違いについて考察し、その違いを理解することで、システム構築の成功につなげるためのポイントを探っていきます。

2.ITシステム構築と製造業の違い

まず、製造業の視点からITシステム構築を捉える際の誤解を解くことが重要です。製造業は「安くて高品質な製品を大量生産する」という目標を持ち、そのためのプロセスが確立されています。例えば、日本の自動車産業は、トヨタ生産方式などの効率的な生産手法を採用し、品質を確保しつつコストを削減することに成功しています。この成功モデルは、他の産業にも影響を与え、特に効率性が求められる場面では大きな成果を上げてきました。

一方で、ITシステム構築は、その性質上、製造業の大量生産アプローチとは相容れない部分が多々あります。ITシステム構築は、単なる製品を作る行為ではありません。それは「業務プロセスをシステム化する」という極めて複雑な作業です。たとえば、業務には「この状況ではこうする」といった暗黙知や経験則が多く含まれています。しかし、これらを明文化し、プログラムとして実装することは容易ではありません。

製造業では、製品の設計が一度確定すれば、その後の製造プロセスは一定の品質とコストで大量に生産できます。工場のラインが稼働し始めると、同じ製品が次々と生産されるため、コスト効率が高くなるのです。このような製造業の特性は、ITシステム構築には当てはまりません。その詳細を以下より考察していきます。

プロセスの性質の違い

ITシステム構築の本質は、「人が行うプロセスの定義」にあります。システムを通じて業務を自動化・効率化するには、業務に内在する動作や意思決定を、プログラムとして明示的に記述しなければなりません。この過程では、「暗黙知」や「属人性」といった、言葉で定義しづらい要素が大きな影響を及ぼします。

一方、製造業は、製品の工程化や可視化が前提となっています。例えば、自動車の製造プロセスでは、設計図に基づいてすべての部品と手順が明確に定義されます。作業の標準化が行われ、どの工程でも一定の品質を確保できる仕組みが整備されています。

この違いにより、ITシステム構築は、製造業のような線形で確定的なプロセスでは対応できない場面が多くあります。ITシステムは、目に見えない情報やプロセスを扱うため、柔軟な対応と進行中の定義の見直しが求められるのです。

属人性の課題

ITシステム構築には、作業を担うプログラマ個人の能力や経験が大きく関わります。プログラムを書くという行為自体がクリエイティブな要素を含み、その結果はプログラマのスキルによって左右されます。同じ仕様書に基づいても、熟練したプログラマと新人のプログラマでは、コードの品質や保守性、効率性に大きな差が生じます。

これに対して、製造業では製造ラインの標準化が進んでおり、作業者の個々のスキル差を吸収する仕組みが確立されています。たとえば、自動車の部品組み立てでは、手順や道具が統一されているため、熟練者でも新人でも、最終製品の品質は基本的に一定です。

工程管理と分業化を前提とした製造業のアプローチとのギャップ

製造業では、製品の設計から製造、出荷まで、すべての工程が明確に定義され、管理されています。各工程は分業化され、特定の役割や手順が明確に割り当てられるため、効率的かつ均一な品質を実現できます。例えば、自動車製造では、設計図が製造プロセスを決定し、すべての部品が精密に組み立てられることで完成品ができあがります。

この「工程管理と分業化」に基づくアプローチは、製造業において長年成果を上げてきたモデルです。しかし、これをそのままITシステム構築に当てはめると、思わぬ問題が発生します。

ITシステム構築における「プロセスの流動性」とのギャップ

ITシステム構築では、製造業のようにあらかじめすべての仕様やプロセスを固定化することが困難です。その理由の一つに、ITシステムは「未知の要件」や「曖昧な仕様」を含むことが多い点があります。プロジェクトの進行中に初めて顕在化するニーズや課題が頻繁に発生するため、プロセスが流動的になる傾向があります。

また、システム構築はソフトウェアという非物理的な対象を扱うため、製造業のように「完成品として明確に定義された状態」に到達するまでのプロセスが明瞭ではありません。この違いが、製造業のアプローチをそのまま適用する際の大きなギャップを生みます。

3. ITシステム構築を「設計業」として捉える視点

ITシステム構築では、各プロジェクトが個別のニーズや要件に応じて設計されます。プログラミングは、単なる製造工程ではなく設計そのものであり、製造業が目指す均質なプロダクトの大量生産とは本質的に異なります。

ITシステムは用途やユーザーに応じてカスタマイズが必要であり、そのため標準化されたプロセスではなく、柔軟で創造的な設計が求められるのです。

設計とは何か: ITシステム構築におけるプロセスの定義

ITシステム構築における「設計」とは、単なる図面や計画を作成する行為にとどまりません。それは、人間が行う業務プロセスを定義し、システムに落とし込む行為そのものです。業務に内在する手順や判断基準を抽出し、それをコンピュータが実行可能な形に変換することが「設計」としてのプログラミングの核心です。

例えば、業務の「この場合はこうする」という暗黙知を明文化し、具体的な手順として整理することが求められます。これは、製造業で行う「製造工程」の計画とは異なり、常に変更や調整が必要となる動的な行為です。

プログラムを書く行為は「設計」そのもの

プログラミングとは、仕事のプロセスを手続きとして記述する行為であり、同時にアルゴリズムを作成する行為です。プログラムに書かれるコードは、人間の思考を反映し、業務の流れを具体的に表現します。

ここで重要なのは、プログラミングが単なる「コーディング」ではなく、「設計」であるということです。プログラムの品質は、設計の良し悪しによって左右されます。例えば、顧客の要件を正確に理解し、それを効率的かつ柔軟な形でコードに落とし込む能力が求められるのです。

製造業では、製品の設計図に基づき、均質な製品を大量に生産することが目的です。しかし、ITシステム構築では、各プロジェクトが異なる要件やニーズに応じて設計されます。この違いは、以下のように説明できます：

製造業

製造業では、設計が一度完了すると、その後の製造工程は繰り返し可能な均質なプロセスとして実行されます。

例えば、自動車の設計図が完成すれば、工場のラインで同じ手順を繰り返すことで、品質の安定した製品を大量生産できます。作業者が変わっても、設備や手順が標準化されているため、同じ品質の製品を作り続けることが可能です。

このように製造業では、設計と製造が明確に分離されており、設計完了後は効率的な量産体制に移行できるのが特徴です。品質管理も統一された基準で行われるため、安定した製品供給が実現できます。

製造業の成功は、この標準化と効率化にあると言えるでしょう。

ITシステム構築

ITシステム構築では、プログラムを書く行為そのものが設計であり、各工程がプロジェクト特有の仕様に依存します。同じ機能を実装する場合でも、プログラマーの経験やスキル、採用する技術によって、コードの品質や構造が大きく変わります。

また、お客様の業務要件や既存システムとの連携方法によって、最適な実装方法が毎回異なるため、標準化が困難です。プログラミングには創造性と問題解決能力が求められ、画一的な作業では対応できない複雑さがあります。さらに、開発中に新たな要件が判明したり、技術的な課題が発見されたりすることも多く、柔軟な対応が必要になります。

このため、ITシステム構築は製造業のような均質な生産プロセスではなく、常に設計と実装が一体となった創造的な活動なのです。

つまり、製造が「規格化されたプロダクトの生産」を目指すのに対し、ITシステム構築は「個々の仕様に基づく設計」を行うプロセスであると言えます。

4. ITシステム構築・開発の4つの方法

ITシステム構築には、プロジェクトの特性や要件に応じて選択できる4つの主要な開発手法があります。それぞれの手法には独自の特徴とメリットがあり、プロジェクトの規模や期間、変更の頻度などを考慮して最適な方法を選ぶことが重要です。

製造業とは異なり、ITシステム開発では柔軟性と適応性が求められるため、これらの手法を理解することで、より成功率の高いプロジェクト運営が可能になります。

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①ウォーターフォール

ウォーターフォール開発は、最も伝統的で分かりやすい開発手法です。要件定義から設計、開発、テスト、リリースまでを順番に進めていく方法で、まさに製造業の工程管理に似た特徴を持っています。各工程が完了してから次の工程に進むため、プロジェクトの進捗状況が把握しやすく、品質管理も行いやすいのが特徴です。

大規模なシステムや要件が明確に定まっているプロジェクトに適しており、特に金融システムや基幹システムなど、高い信頼性が求められる分野でよく採用されます。ただし、途中での仕様変更が困難で、後戻りにコストがかかるという課題もあります。

②アジャイル

アジャイル開発は、短期間での反復開発を繰り返しながらシステムを完成させる手法です。1〜4週間程度の短いサイクルで、企画から開発、テストまでを行い、その都度お客様からのフィードバックを受けて改善していきます。変化の激しいビジネス環境に対応しやすく、途中での仕様変更にも柔軟に対応できるのが最大の特徴です。

特にWebアプリケーションやモバイルアプリの開発において威力を発揮し、ユーザーのニーズに素早く応えることができます。チーム内のコミュニケーションが活発になり、問題の早期発見・解決にもつながります。ただし、全体の完成形が見えにくく、プロジェクト管理に慣れが必要という面もあります。

③プロトタイプ

プロトタイプ開発は、実際のシステムを作る前に、まず試作品を作成してユーザーに使ってもらう手法です。完成品のイメージを具体的に確認できるため、お客様との認識のズレを防ぎ、より満足度の高いシステムを構築できます。

特に新しい技術を使用する場合や、ユーザーインターフェースが重要なシステムにおいて効果的です。プロトタイプを触ってもらうことで、お客様からの具体的な要望や改善点を早期に把握でき、本格的な開発に入る前に方向性を確定できます。

また、技術的な課題や実現可能性の検証にも役立ちます。ただし、プロトタイプ作成に時間がかかることや、お客様がプロトタイプを完成品と勘違いしてしまうリスクもあります。

④スパイラル

スパイラル開発は、リスクの分析と評価を重視しながら、螺旋状に開発を進めていく手法です。プロジェクトを小さな単位に分割し、各段階でリスクを洗い出して対策を立てながら進めるため、大きな失敗を避けることができます。

特に大規模で複雑なシステムや、新技術を多用するプロジェクトにおいて威力を発揮します。各サイクルで要件定義、設計、実装、評価を行い、その結果を次のサイクルに活かしていきます。リスク管理が徹底されているため、プロジェクトの成功率が高く、予算やスケジュールの大幅な超過を防げます。ただし、リスク分析に専門知識が必要で、小規模なプロジェクトには向かない場合もあります。

5. ITシステム構築・開発の工程

ITシステム開発は、複数の工程を段階的に進めることで成功に導きます。各工程には明確な役割があり、前の工程の成果物が次の工程の基盤となるため、丁寧に進めることが重要です。

製造業とは異なり、ITシステム開発では各工程で設計と検証を繰り返しながら、徐々に具体的なシステムを作り上げていく特徴があります。

要件定義

要件定義は、お客様の「こんなシステムがほしい」という要望を、具体的な機能として明文化する重要な工程です。業務の流れや課題を詳しくヒアリングし、システムで解決すべき問題を整理していきます。この段階では、システムに実装する機能だけでなく、性能やセキュリティなどの非機能要件も決定します。

要件定義の精度がプロジェクト全体の成功を左右するため、お客様との認識のズレがないよう、何度も確認を重ねながら進めます。

完成したシステムが期待通りに動作するかどうかは、この要件定義の品質にかかっています。要件定義書は、お客様にも理解しやすい言葉で書かれるため、専門用語を避けた分かりやすい表現を心がけます。

要件定義とRFPの違いについて知りたい方はこちら

基本設計

基本設計は、要件定義で決めた内容を実際のシステムの形に落とし込む工程です。画面のレイアウトやデータの流れ、システム全体の構成など、お客様の目に見える部分を中心に設計していきます。

この工程では、システムを機能ごとに分割し、それぞれの機能がどのように連携するかを明確にします。

基本設計書は、お客様がシステムの完成イメージを確認するための重要な資料になるため、図やイラストを多用して理解しやすく作成します。

また、お客様との定期的なレビューを通じて、設計内容が期待に沿っているかを確認し、必要に応じて修正を行います。基本設計の段階で仕様を固めることで、後の工程での大きな変更を避けることができます。

詳細設計

詳細設計は、基本設計の内容をプログラマーが実際にコードを書けるレベルまで詳細化する工程です。

データベースの構造やプログラムの処理手順、エラー処理の方法など、システムの内部構造を具体的に設計します。

この段階では、技術的な専門知識が必要となり、プログラミング言語や開発環境を考慮した設計を行います。詳細設計書は開発者向けの技術文書となるため、お客様が内容を理解する必要はありませんが、品質の高いプログラムを作るための重要な設計図となります。

また、テスト項目も同時に検討し、完成したシステムが設計通りに動作するかを確認する準備も行います。詳細設計の精度が、プログラムの品質と開発効率に直結するため、経験豊富な設計者が担当することが重要です。

開発

開発工程では、詳細設計書をもとに実際のプログラムコードを作成します。プログラマーが設計書の内容を読み取り、指定されたプログラミング言語を使ってシステムを構築していきます。

この段階では、コーディング規約に従って統一性のあるプログラムを作成し、後のメンテナンスがしやすいよう配慮します。複数のプログラマーが同時に作業するため、進捗管理やコードの品質管理が重要になります。

また、作成したプログラムが設計通りに動作するか、開発者自身による基本的なテストも並行して実施します。開発工程は目に見える成果が現れる段階であり、プロジェクトメンバーのモチベーション向上にもつながる重要な工程です。

システム開発についてさらに詳しく知りたい方はこちら

テスト

テスト工程では、開発されたシステムが設計通りに正しく動作するかを多角的に検証します。単体テスト、結合テスト、システムテストの順番で段階的にテストを実施し、問題がないことを確認します。

お客様の業務シナリオに基づいた運用テストも行い、実際の使用環境でシステムが期待通りに動作するかを検証します。テストで発見された不具合は、開発チームが修正し、再テストによって品質を確保します。

この工程では、お客様にも実際にシステムを操作していただき、使い勝手や機能について最終確認を行います。テストの品質がシステムの信頼性に直結するため、十分な時間をかけて丁寧に実施することが重要です。

リリース

リリース工程では、完成したシステムを本番環境に導入し、実際の業務で使用できる状態にします。データの移行やシステムの設定変更など、本番稼働に向けた最終準備を慎重に行います。ユーザーへの操作研修や運用マニュアルの提供も、この段階で実施します。

リリース後は、システムが安定して動作するかを監視し、問題が発生した場合は迅速に対応します。

段階的なリリースを行う場合は、一部のユーザーから始めて徐々に利用範囲を拡大していきます。

リリースの成功により、お客様の業務効率化や課題解決が実現され、プロジェクトの価値が発揮されます。

メンテナンス

メンテナンス工程では、稼働中のシステムの安定運用と継続的な改善を行います。日常的な監視やデータバックアップ、セキュリティ対策の実施など、システムを健全に保つための活動を継続します。

ユーザーからの要望や業務の変化に応じて、機能の追加や修正も実施します。定期的なアップデートやセキュリティパッチの適用により、システムを最新の状態に保ちます。

障害が発生した場合の復旧対応や、システムの性能改善も重要な業務です。メンテナンス工程は、システムの価値を長期間にわたって維持し、お客様の業務を支え続けるための重要な工程です。

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ITシステム構築は、製造業とは根本的に異なるアプローチが必要な複雑なプロジェクトです。設計業としての特性を理解し、適切な開発手法と工程管理を行うことで、成功に導くことができます。しかし、多くの企業が製造業の常識をそのまま適用してしまい、プロジェクトが思うように進まないという課題に直面しています。

オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社は、ITプロジェクト支援事業、デジタル＆テクノロジー事業、IT構築に関するリサーチ＆レポート事業を展開し、現状調査から方式検討、設計、完成まで包括的なシステム開発サービスを提供しています。

単なるシステム開発会社ではなく、お客様の業務プロセスを深く理解し、真の課題解決に向けたコンサルティングから実装まで一貫してサポートいたします。設計構造の最適化により、システム開発総額を大幅に抑制できるのも特徴です。

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