企業のシステム構築の内製化は止まらない

2013/06/07

 

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臨機応変な内製化の体制

システム内製とはユーザ企業が主体的に情報システムを開発することを指します。IT人材の7割がユーザ企業にいるといわれる米国企業では当たり前とされる体制ですが、日本企業の場合、IT人材のほとんどは外部のIT企業にいます。よってアウトソースしか選択枝が無かったわけですが、ここ数年をウォッチすると、ITを戦略的に活用する企業では、社内にIT人材を確保する傾向が強まっています。

有名どころでは良品計画、サイバーエージェント、住友電工、アマナ、東急ハンズなど。

私がお邪魔するクライアント企業でも内製体制を整えつつあります。ひとつひとつ見積もりを取って、外部に依頼する手間を省きたい、変更の自由度と生産性を大幅に向上させたいという希望が適うのは確かに魅力的です。経営戦略から見ても、その都度外部に依頼するよりも、内部で対応したほうがスピード感があります。

見直しが迫られるITベンダの立ち位置

この流れはどんどん進む可能性があります。となるとITベンダの役割はパッケージの提供やクラウドサービスに集約され、独自開発を手伝う仕事はどんどん縮小し、いづれ無くなってしまうのかも知れません。

これに少し関連することで、日経BP編集委員の木村岳史さんは、日経コンピュータ2013年5月30日で、こう語っています。

システム内製を広く定義すれば、外部リソースを活用しながらも、システム設計やプロジェクトマネジメントを自ら主体的に取り組むことだと言ってよい。

興味深いのですが、全てを内部でまかなうのではなく、適材適所で外部から調達して、全体として最適な体制をつくるというわけです。さらに続きます。

システム内製で最近、特に注目されるのは、新規事業の立ち上げや既存事業のビジネスモデルの変革といった、ビジネスのイノベーションを実現するためのシステム開発だ。

例えば新規事業に必要なシステム開発の場合、最初から要件が決まることは少なく、事業の進展によって要件も変わるため、臨機応変で素早い対応が求められる。こうした案件は、ウォーターフォール型の開発を得意とする外部のIT企業にアウトソーシングするのは難しく、IT担当者が新規事業チームと一体となって開発に取り組める内製が適している。

こうしたイノベーションに資するシステム内製は、従来のやり方を踏到できない。

戦略的に重要なシステムは、ウォータフォールではなくてスパイラルに構築することが求められるとかな、と解釈しました。ここでスパイラルという表現がふさわしいかは不明ですが、アジャイルやリーンと異なり、システムへの要求事項をテクニカルとビジネスの両面から詰めるという点では、氏の意見と一致すると思います。

内製を支援するというITサービスがあっても良いのではないか

しかし皮肉なことに、顧客からの要求至上主義のITベンダは、今更スパイラルには対応できないわけです。ということから、ITサービスの分野はこれから再編が起こりそうな予感がします。ちなみに米国ではシステム開発の内製化率が高く、システム開発のアウトソーシング業態はさほど発達していない状況からすると、日本は世界からみると特殊なのでしょうね。

私としては、ユーザー企業のプロジェクトチームに入って内製を支援するというサービスがあっても良いと思います。請負でもなく常駐型派遣でもなく、プロフェッショナルサービスを提供するという新しい形態です。まぁ、コンサルティングに近いといえば近いですが、一緒にビジネスを立ち上げましょう的な立ち位置。

当たり前の話ですが、市場の流れを読んで、よく戦略を練った企業が成功していくのでしょう。

 

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。