予算超過を未然に防ぐ7つのポイント

2015/03/17

品質、納期、コストがなかなか予定通りにいかないのがシステム導入です。
また次々に細かい要求が出てくるという特徴もあります。
数ある制約条件のなかで「出来る限りの成果を挙げるにはどうすればよいのか?」についてご説明します。

1. これさえ実現できれば」という、出来あがりの強いイメージを作ること

システム開発では、何を作るのかといった課題設定が難しく、多くの場合、課題は構築の途中で見えてきますスペックを全て決めてからではなく、作りながらスペックを決めていくやり方が、結果として多いからです。そのため効率が悪く、手戻りが頻繁に発生します。

このようにシステム開発のコストが予定どおりにいかなくなる最大要因のひとつは「手戻りによる工数増加」です。
ちなみに、次のようなことはシステム開発の現場では、日常茶飯事になっています。

  • 一旦作ってはみたもののやはり別の方がいい…。
  • イメージが固まってなくて、どのようなものが欲しいのか自分でもわからないので 、とりあえず作ってもらったが、どうも違う…。
  • 使い勝手の事まで頭が廻らず完成後に変更が多い。

これを避けるためには、 「これさえ実現できれば」という、出来あがりの強いイメージを持つことが大切です。 また事前にイメージを持つと、現実との折り合いを強く意識できるようになります。
そのために、「あれも、これも」と欲が出たり、ブレが生じませんので、最初から必要最小限のものだけで済みやすくなります。

2. 使用頻度が低い割に、開発コストがかかる部分を、そのままシステム化しないこと

業務には、システム化しやすいものと、そうではないものがあります。

システム化しやすいのは、いわゆる「定型業務」です。その一方、ケースバイケースで人間が判断すべきことが多い「非定型」な業務はシステム化するためにコストがかかります。

そこで「非定型業務」については、すべてシステム化するのではなく、人間の作業支援の部分だけをシステム化するよう工夫するか、あるいは思い切って システム化はあきらめるか、というように割り切った発想が必要です。
このように発想して、最初の時点から、開発内容をできる限り小さくすることがポイントです。

3.データ項目の整理をすること

例えば顧客データであれば「自社のデータとして必要な項目を洗い出す」ことを事前に行います。

一般的には、氏名、フリガナ、住所、電話番号、E-mail、性別、年齢、職業、勤め先、家族構成などがありますが、さらに必要な情報を洗い出し、取捨選択します。その後、それぞれのデータを入力するのは誰なのか、あるいはデータを持っているのは誰なのかを明確にします。

自社の部門や担当者が複数の場合、「顧客データ」に似て非なるデータが、担当者ごとに保有されていることがあります。そのため必要なデータが現状でどこにあるのかを洗い出すことで、今後のシステム化のためのコストが下がります。それとは逆に、後の工程で発覚すると手戻り要因となります。

4. 開発したシステムは何年くらい使うものなのかを想定すること

システムを何年間使い続けるかを最初に考えることは難しいのですが、現実の問題として、短期間しか使用しないものに高い開発費はかけられません。

一般には、小規模なシステムの場合は、比較的長期間使用される傾向にあります。 逆に大規模な場合は、途中で大規模改修が無い限り、短期でシステムを刷新することが多いようです。

このことからシステムを多機能にすると、規模の増大化により、意外に短期間の寿命しかないという事実が見えてきます。
こういった理由から、長期間使用する場合にはできるだけ機能を絞り込んだ方が良いのです。

5. パッケージを使用して、業務をそのパッケージに合わせること

パッケージは「一般的な」業務形態を想定して作られています。

自社の特殊な業務部分をより一般的なやり方に変更することができれば、パッケージを使うことが、スケジュール的にもコスト的にもベストになる場合があります。パッケージをカスタマイズする方法もありますが、微細なカスタマイズであればともかく、通常は時間もコストもかかりますし、さらに完全にオリジナルにはなりません。

できるだけ業務をパッケージに合わせて、どうしてもあわない部分は「カスタマイズ」ではなく、前述の2と同様にあえてシステム化しないという選択肢も考えるべきです。

6. 要求は多く出したうえで「おまかせ」にすること

単純に「おまかせ」にした方が安くなりそうですが、意外とそうでは ありません。

開発を行うシステム会社に対してはできるだけ多くの情報を与える方がシステムは作りやすいものです。またその方が当然自社にマッチしたシステムになります。細かな画面上の問題などにこだわりすぎず、「おまかせ」に できる部分はとことん徹底することで、開発期間を短縮でき、そのまま工数の節約につながります。

もちろん「おまかせ」にする以上は細部へのこだわりを捨て、作業の手戻りを発生させないことが大切です。

7. 全てをシステムに依存しないこと

抱えている課題を、システムによって改善できる部分と、業務手順の変更によって改善できる部分とに分けて考えることが大切です。

そして、システムによって対応する部分も、できる限り必要最小限に留めるのがベターです。
なぜなら最初から、システムと業務を一体化してしまうと便利な反面、システムを変えないと業務を変えられなくなるために、ビジネス変化への柔軟性が損なわれるからです。

それよりも、人力作業の部分を極力残しておいて、ボトルネックの大きい部分だけをシステムに任せるという考え方のほうが、うまくいきやすいですし、システムの開発コストを抑えることにもつながるため、投資対効果も良くなります。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。