DXが進まない会社には共通点がある|経営者が最初に整理すべき「経営判断」とは

  • 「DXに数千万円投資したのに、期待した成果が出ない。」
  • 「システム会社から提案は受けているが、本当にこの方向で進めてよいのか判断できない。」
  • 「生成AIも活用したいが、何から手を付ければよいのか分からない。」

このような悩みを抱える経営者は少なくありません。

私たちも日々、システム刷新やDXのご相談を受けていますが、実はプロジェクトが思うように進まない企業には、ある共通点があります。

それは、システムやIT人材が不足していることではありません。

「何を実現したいのか」という経営判断が整理されないまま、システムの検討を始めてしまうことです。

DXという言葉が流行した時代は過ぎました。

しかし、人手不足への対応、生成AIの活用、サイバーセキュリティ対策、データ活用など、企業が変化に対応し続けなければならない現実は変わっていません。

つまり、DXという言葉の流行は落ち着いても、その本質はこれからも経営にとって重要なテーマであり続けます。

本記事では、多くのDXプロジェクトを支援してきた経験をもとに、「DXが進まない本当の理由」と、経営者が最初に整理すべきことについて解説します。

「システムを入れればDXになる」は、なぜ失敗するのか

DXのご相談を受ける際、最初にこのようなお話を伺うことがあります。

  • 「ERPを導入したい。」
  • 「販売管理システムを入れ替えたい。」
  • 「生成AIを社内で活用したい。」

もちろん、これらはDXを進めるための有効な手段です。

しかし、本来考えるべき順番は逆です。

例えば、

  • 月末になると各部署からExcelが集まり、経理担当者が何日もかけて数字を集計している
  • 営業会議では毎回、「その数字は本当に最新なのか」という議論から始まってしまう
  • ベテラン社員しか分からない業務があり、その人が休むと仕事が止まる

こうした問題を解決することが目的であり、システムはそのための手段に過ぎません。

ところが、目的が曖昧なままシステム選びを始めてしまうと、「多機能だから」「最新だから」という理由で製品を選び、本当に解決すべき課題が置き去りになってしまいます。

その結果、「高額な投資をしたのに、以前と仕事の進め方がほとんど変わらない」という状況が生まれてしまうのです。

DXが止まる会社に共通する3つの特徴

私たちがご支援してきたプロジェクトを振り返ると、DXが停滞する企業には共通した特徴があります。

1. システムの話から始めてしまう

本来であれば、「会社として何を変えたいのか。」を整理してから、「そのためにどのようなシステムが必要か。」を考えるべきです。

しかし現実には、「何か良いシステムはありませんか。」という相談から始まるケースが少なくありません。

これでは、手段が目的になってしまいます。

2. 判断をベンダーへ委ねてしまう

ベンダーは、「どう作るか」の専門家です。

一方で、

  • 「何を優先するか。」
  • 「どこまで投資するか。」
  • 「どの業務を変えるか。」

これらは経営者が行うべき判断です。

ところが、「一番良い方法を提案してください。」という形で経営判断まで委ねてしまうと、プロジェクトの主導権は発注企業から離れてしまいます。

ベンダーが悪いわけではありません。役割が違うのです。

3. 「全部やりたい」になってしまう

営業部門にも要望がある。製造部門にも要望がある。管理部門にも改善したいことがある。どれも間違っていません。

しかし、予算も時間も人員も限られています。

だからこそDXでは、「今はやらないこと」を決めることも重要な経営判断になります。

優先順位が決まらないプロジェクトは、例外なく長期化し、費用も膨らんでいきます。

「システムを作るかどうか」ではなく、「本当に投資すべきか」を考える

ある企業から、「基幹システムを全面的に刷新したい」というご相談をいただいたことがありました。

当初は数千万円規模のプロジェクトが想定され、複数のベンダーからも大規模な刷新案が提案されていました。

しかし、私たちはすぐにシステムの話を始めることはしませんでした。

まず取り組んだのは、

  • 現在の業務はどのように流れているのか
  • 本当に困っていることは何か
  • 経営として何を改善したいのか

という整理です。

すると見えてきたのは、問題の多くがシステムそのものではなく、長年の運用の積み重ねによって業務が複雑になっていたことでした。

  • 同じデータを複数の部署で入力している
  • Excelで加工した結果だけが独り歩きしている
  • 担当者しか分からない運用が増えている

こうした課題を一つひとつ整理した結果、全面刷新ではなく、既存システムの一部改修と業務プロセスの見直しだけで当初の目的を達成できることが分かりました。

もし最初から「システムを作る」という前提で進めていたら、企業は必要以上の投資を行っていたかもしれません。

もちろん、すべての企業が同じ結論になるわけではありません。全面刷新が最適なケースもあります。

重要なのは、システムを導入することではなく、「その投資は本当に必要か」という経営判断を最初に行うことなのです。

DXで最も重要なのは「判断の順番」である

DXプロジェクトが失敗する企業を見ると、共通して「判断の順番」が逆になっています。

例えば、

  • 「どのシステムを導入するか。」
  • 「どのベンダーへ依頼するか。」
  • 「どのAIサービスを使うか。」

こうした議論から始めてしまうのです。

しかし、本来の順番は違います。

最初に整理すべきなのは、会社として何を実現したいのか。

次に、そのために何を変えるべきなのか。

そして、その実現手段として、システムやAIは本当に必要なのか。

この順番で考えれば、必要以上に高価なシステムを導入したり、流行の技術に振り回されたりすることは少なくなります。

言い換えれば、DXとはシステムを選ぶプロジェクトではありません。

経営資源をどこへ配分するかを決める投資判断のプロジェクトなのです。

システム会社では答えられない問いがある

ここで、一つ誤解していただきたくないことがあります。

私たちは、システム会社が悪いと言いたいわけではありません。

システム会社には、「どう作るか」を考える専門性があります。

一方で、

  • 「何を作るべきか。」
  • 「本当に今投資すべきか。」
  • 「優先順位はこれでよいのか。」
  • 「将来を見据えた選択になっているか。」

こうした問いには、正解が一つではありません。

なぜなら、これは技術ではなく経営の問題だからです。

そのため、システム会社だけに判断を委ねるのではなく、発注企業自身が経営として意思決定を行う必要があります。

しかし、日々の業務に追われる中で、社内だけで客観的な判断を行うことは簡単ではありません。

だからこそ、システムを作る立場とは異なる第三者が、経営とITの両面から整理し、意思決定を支援することに価値があります。

私たちは、その役割こそがDXを成功へ導く鍵だと考えています。

DXが進む会社は、「システム」ではなく「経営判断」から始めている

DXという言葉が流行した時代は過ぎました。しかし、企業を取り巻く環境は、これからも変化し続けます。

人手不足への対応、生成AIの活用、サイバーセキュリティ対策、クラウドサービスの進化――。

経営者には、これまで以上に「何へ投資し、何を変え、何を変えないか」を判断する力が求められています。

その意味で、DXとは「システム導入」ではありません。

変化に対応するための経営判断を積み重ねることです。

成果を出している企業ほど、システム選定やベンダー選定の前に、

  • 自社は何を実現したいのか
  • そのために何を優先するのか
  • 投資に見合う成果をどのように評価するのか

を整理しています。

一方で、この順番が逆になると、システムは完成しても、経営課題は解決されないまま残ってしまいます。

DXの成否を分けるのは、最新の技術ではなく、経営判断の質なのです。

「何を作るか」ではなく、「何を実現するか」を整理する

システム会社へ相談すると、多くの場合は「どのようなシステムを作るか」という議論から始まります。

もちろん、それはシステム会社として当然の役割です。

しかし、発注企業にとって本当に重要なのは、その前の段階にあります。

  • 本当にこの投資は必要なのか
  • 全面刷新が最適なのか、それとも一部改修で十分なのか
  • AIを導入すべきなのか、それとも業務プロセスを見直すべきなのか
  • 今、優先して取り組むべき課題は何なのか

これらは、技術ではなく経営の視点から判断すべきテーマです。

私たちは、システムを販売する立場ではなく、発注企業の立場でこうした経営判断を整理し、プロジェクト全体を成功へ導くご支援を行っています。

だからこそ、「システムを作ること」が目的ではなく、「企業として最適な意思決定を行うこと」を重視しています。

DXを成功させる第一歩は、「判断を整理すること」

もし現在、

  • DXを進めたいが、何から始めればよいか分からない
  • システム会社から提案を受けているが、このまま進めてよいか判断に迷っている
  • AIやクラウドも含めて、どこへ投資すべきか整理したい

このようなお悩みをお持ちであれば、一度立ち止まって「経営判断」を整理してみることをおすすめします。

システムや製品を選ぶことは、その後でも遅くありません。

まずは、自社が何を実現したいのかを明確にすること。

それが、DXを成功へ導く最も確実な第一歩です。


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DXは、単独のシステム導入ではなく、IT投資やプロジェクト運営、AI活用まで含めた経営全体の取り組みです。あわせて、以下の記事もぜひご覧ください。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。

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