AIでコンサルは不要になるのか?――「答えを出すだけ」の専門家が淘汰される理由

「それ、AIに聞けばよくないですか?」
生成AIが急速に進化する中、コンサルタントにとって少々耳の痛い問いが、いよいよ現実味を帯びてきました。
市場調査、競合分析、事例収集、課題整理、フレームワークへの当てはめ、企画書のたたき台。システム分野でいえば、RFPの骨子作成や製品比較、プロジェクト計画の作成まで、かつて専門家へ依頼していた仕事の相当部分をAIが短時間でこなせるようになっています。
しかも、「AIが出せるのは一般論だけ」という話でもなくなってきました。
自社の事業内容、予算、人員、既存システム、期限、制約条件などを十分に与えれば、「御社ならA案よりB案を推奨します。その理由は……」というところまで、かなり具体的な判断案を出してきます。
では、AIでコンサルは不要になるのでしょうか。
私は、かなりの部分で「YES」だと思っています。
ただし、コンサルタントという職業そのものがなくなるという意味ではありません。
これまでコンサルタントが価値として売ってきたものの相当部分が、売り物ではなくなっていく。
その一方で、これまで資料作成や調査の陰に隠れていた「本当の実力」が、むしろ問われるようになるのではないでしょうか。
「知っていること」に高い値段をつけるのは難しくなった
かつてコンサルタントと顧客との間には、大きな情報格差がありました。
他社事例を知っている。
業界の動向を知っている。
専門的なフレームワークを知っている。
ITやシステムについて詳しい。
そして、大量の情報を整理して分かりやすい資料にまとめられる。
顧客が自分で同じことをやろうとすれば膨大な時間が必要だったため、この情報格差そのものに価値がありました。
しかし、生成AIによってその前提は崩れ始めています。
「基幹システム刷新の進め方を整理してほしい」
「パッケージとスクラッチ開発を比較してほしい」
「RFPに盛り込む項目を洗い出してほしい」
と頼めば、AIは数分でかなりの水準まで答えてくれます。
もちろん、情報の正確性を確認する必要はあります。しかし少なくとも、
「知らないから専門家に聞く」
というだけのビジネスモデルは、これから相当厳しくなるでしょう。
「それっぽい資料を作る仕事」は、さらに厳しくなる
もう一つ、価値が大きく下がると思われるのが資料作成です。市場調査レポート、課題一覧、比較表、ロードマップ、数十ページのPowerPoint。
もちろん資料そのものが不要になるわけではありません。問題は、資料を作るために大量の人間の工数を投入することを、顧客がどこまで許容するかです。
AIを使えば、情報収集から構成案、文章、表、図のたたき台まで短時間で作れます。その時代に、調査や資料作成を理由に「コンサルタント3名で3か月です」と言われたら、顧客側も「その工数、本当に必要ですか?」と考えるようになるでしょう。
これはコンサルタントにとって厳しい話ですが、顧客にとっては歓迎すべき変化です。AIでできる仕事はAIでやる。その分コンサルティング費用が下がるか、同じ費用なら人間がもっと価値の高い仕事に時間を使う。
本来はこちらの方が健全です。
「AIは一般論しか言えない」は、もう通用しない
ここで、AI時代のコンサル論でよく語られる説明について触れておきたいと思います。
「AIが出せるのは一般論。自社固有の事情を理解して判断するのは人間」という説明です。
私は、この説明もそろそろ危ないと思っています。AIに十分な情報を与えれば、自社固有の条件をかなり踏まえた回答を出せるからです。
たとえば、
「現行システムの保守期限はあと1年。予算は1億円。IT部門は3名。現場のITリテラシーは高くない。業務停止は許されない。
一方で既存システムには技術的負債が蓄積している」
といった条件を与えれば、一括刷新と段階移行のどちらが適しているか、リスクまで含めて相当まともな分析をしてくれるでしょう。
- 「現場から反対された場合はどうすればいい?」
- 「ベンダーから追加費用を要求されたら?」
- 「3か月遅延した場合、どこを見直すべき?」
そんな問いにも対応策を提示してくれます。
つまりAIは、Know(知識)だけではなく、Decide(判断)やExecute(実行)の領域にも、すでに入ってきています。
だからこそ、「AIにはできないことを探して、コンサルタントの存在意義を説明する」という発想そのものを捨てた方がよいと思うのです。
AIが判断案まで出せるのに、なぜ会社は動かないのか
ここからが、本題です。AIがこれだけ優秀になっても、企業の意思決定が自動的に進むわけではありません。
なぜでしょうか。それは、企業の意思決定で難しいのは、「正解を知らないこと」だけではないからです。
たとえば、老朽化した基幹システムを刷新するとします。AIに分析させた結果、
- A案:一括刷新
- B案:段階的刷新
という二つのシナリオが出たとします。A案なら短期間で技術的負債を解消できる。しかし、予算もリスクも大きい。B案ならリスクを抑えられる。しかし、移行期間が長期化し、旧システムとの二重運用が発生する。
ここまではAIがきれいに整理してくれます。問題はその先です。
どちらも、それなりに正しい。だからこそ企業は、どちらかを選ばなければなりません。そして一方を選ぶということは、もう一方のメリットを捨てることでもあります。
意思決定とは「正解を見つけること」ではなく「何かを捨てること」
実際のシステムプロジェクトでは、すべてを満たす答えなどほとんどありません。
品質を上げれば費用が増える。
納期を優先すれば、機能を削る必要がある。
現場の要望をすべて盛り込めばシステムは複雑になる。
標準化を優先すれば、これまでの業務を変えなければならない。
つまり経営がやるべきことは、「100点の答え」を探すことではありません。どのメリットを取り、何を諦め、どのリスクを引き受けるかを決めることです。
AIは、その判断材料を非常に高い水準で提示してくれるでしょう。条件を与えれば「私ならA案を推奨します」とまで言ってくれるかもしれません。
しかし、その回答をもとに経営会議で説明し、事業部門を納得させ、IT部門と調整し、現場から出てくる反対意見を受け止め、最終的に会社として「これで行く」という状態を作る仕事は残ります。
AIが判断できないのではありません。AIは判断案を出せても、企業の意思決定プロセスの当事者にはなれない。
ここに大きな違いがあります。
本当の難所は「決めた後」に始まる
そして、システムプロジェクトを何度か経験すると、もう一つ分かってくることがあります。
方針を決めるところまでなら、まだきれいに進む。本当に難しいのは、その後です。
たとえば要件定義を始めたところ、現場から大量の要望が出てきたとします。
すべて盛り込めば予算を3,000万円超える。しかし切り捨てれば、現場から「このシステムでは仕事にならない」と言われる。
ここで必要なのは、「要件定義では優先順位をつけましょう」という一般論ではありません。
どの要件を残すのか。何を捨てるのか。システムで対応せず業務を変えるのか。そして、それを誰が現場へ説明するのか。
ベンダー選定でも同じです。
3社から提案を受け、機能比較表にはほとんど○が並んでいる。
A社8,000万円、B社1億円、C社1億2,000万円。
価格だけならA社ですが、プロジェクトマネージャーを見ると少し不安がある。
一方C社は高いものの体制は強そうだ。
「価格、機能、実績、体制などを総合的に評価しましょう」という回答なら、AIでも簡単に出せます。
しかし、8,000万円のA社に賭けるのか、4,000万円余計に払ってC社を選ぶのか。企業には現実の判断が必要です。
実行とは「計画通りに進めること」ではない
さらにプロジェクトが始まれば、計画時には想像していなかったことが次々に起きます。
既存システムから想定外の仕様が見つかる。
データ移行が予定より難しい。
ベンダーから追加費用を要求される。
主要担当者が退職する。
現場が新システムへの移行に反発する。
予定していた期日に間に合わない。
そこで「当初計画との差異」を整理するだけなら、AIは非常に得意でしょう。
しかしプロジェクトを前へ進めるには、「ではどう変えるか」を決め、関係者と交渉し、新しい計画を成立させなければなりません。
場合によっては、
- 「この機能は今回諦めましょう」
- 「追加費用はここまで認めましょう」
- 「このベンダー体制では無理なので交代を要求しましょう」
- 「予定していたリリースを半年延期しましょう」
という、誰も喜ばない判断も必要になります。
実行とは、最初に決めた計画を忠実になぞることではありません。現実にぶつかるたびに判断をやり直し、妥協点を探し、関係者を動かしながらゴールへ近づけていく仕事です。
AIは「どうすればいいか」も答えられる。それでも実行主体にはなれない
ここでも「そんな泥臭い問題はAIには分からない」と考えるべきではないと思います。
AIに、「追加3,000万円を要求された。どう交渉すべき?」と聞けば、契約内容の確認、追加要件の切り分け、見積根拠の精査、代替案の検討など、かなり適切な対応策を出してくれるでしょう。
問題は、その次です。
- 誰かがベンダーと話さなければならない
- 誰かが社内へ説明しなければならない
- 誰かが現場の不満を聞かなければならない
- 誰かが会議で選択肢を提示しなければならない
- そして誰かが、決まった方針を実際のプロジェクトへ反映させなければならない
AIにできないから人間が必要なのではありません。
AIがどれだけ優秀になっても、現実の組織を動かす主体が必要だから、人間の仕事が残るのです。
この違いは、AI時代のコンサルティングを考えるうえで重要だと思います。
AI時代のコンサル価値――Know / Decide / Execute
ここまでを整理すると、AI時代のコンサルティングは「AIができる仕事」と「人間にしかできない仕事」を単純に線引きするより、AIと人間がそれぞれの領域でどう関わるかを考えた方が実態に近くなります。
| 領域 | AIがすでにできること | コンサルタントに問われる価値 |
|---|---|---|
| Know(知識) | 調査、分析、事例収集、比較、資料化 | 情報の検証、問いの設定、論点の見極め |
| Decide(判断) | 判断案、シナリオ作成、リスク分析 | 優先順位付け、合意形成、意思決定支援 |
| Execute(実行) | 手順提示、問題分析、対応策の提案 | 交渉、調整、軌道修正、実際に動かす |
AIはKnowだけを担当するわけではありません。Decideにも入ってくる。Executeにも入ってくる。今後はさらにその領域が広がるでしょう。
だからこそコンサルタント側も、「ここから先はAIにはできません」と線を引いて自分たちの仕事を守ろうとするのではなく、AIを使えるところまで徹底的に使ったうえで、自分たちは何の成果に責任を持つのかを問い直す必要があります。
AIによって、むしろコンサルの実力差が露骨になる
私は、AIによってコンサルタントが一律に不要になるとは思っていません。むしろ、実力差がこれまで以上に見えやすくなるのではないかと思っています。
これまでは、膨大な調査、分析、資料作成という「作業量」の中に、コンサルタント自身の実力がある程度隠れていました。
しかしAIがその作業の多くを担うようになると、「この人は、結局何ができる人なのか」がむき出しになります。
知識量だけでは差がつかない。資料のきれいさでも差がつかない。フレームワークを知っているだけでも差がつかない。
そこで問われるのは、問題の本質を見抜けるか、何を捨てるべきかを示せるか、意思決定を前へ進められるか、そして想定外のことが起きたときにプロジェクトを立て直せるかです。
特にITプロジェクトでは、こんな見方もできると思います。
コンサルタントの実力は、計画書を作っているときより、計画書通りにいかなくなったときに分かる。
AI時代には、こうした違いがこれまで以上に明確になるでしょう。
AI時代、企業はコンサルの何を見て選ぶべきか
では企業側は、これからどのような基準でITコンサルタントを選べばよいのでしょうか。
AIでできる仕事に大量の工数を積んでいないか
まず見るべきなのは、調査や資料作成など、AIで大幅に効率化できる仕事へ従来通りの工数を積んでいないかです。
AIを使うこと自体が目的ではありません。しかし、顧客自身がAIを使って数時間でできる仕事に何十人日もの費用を請求するビジネスモデルは、これから説明が難しくなります。
「何人月投入するか」ではなく、その人たちが何の価値を生み出すのかを見る必要があります。
「提言する人」ではなく「決める場」に入れるか
立派な提言書を納品して終わるのか。それとも経営、事業部門、IT部門、現場の間に入り、実際の意思決定まで支援できるのか。
特にシステム刷新では、パッケージかスクラッチか、何を要件から外すか、どのベンダーを選ぶか、追加費用を認めるかなど、プロジェクトの途中で何度も重要な判断が発生します。
その「決める場」に入れるかどうかは、大きな違いです。
計画が崩れた後にも価値を出せるか
そして、最も見ておきたいのがここです。プロジェクトが計画通り進んでいるときは、多くのコンサルタントがそれなりに仕事をできます。差が出るのは、想定外の問題が起きたときです。
「計画との差異はこれだけあります」と報告する人なのか。それとも、「状況が変わったので、こちらへ方針を変えましょう」と次の一手を示し、関係者と調整して実際に動かせる人なのか。
ITコンサルタントを選ぶ際には、過去の成功事例だけでなく、「プロジェクトがうまくいかなかったとき、どう立て直した経験があるか」を聞いてみるのも一つの方法だと思います。
結論――企業がお金を払うのは「答え」から「前へ進めること」へ
AIでコンサルは不要になるのか。少なくとも、「知っていること」や「調べること」、そして「それっぽい資料を作ること」に高い料金を払う時代は終わりに近づいていると思います。
そしてAIはこれから、情報収集だけでなく、判断や実行の支援にもますます入り込んでくるでしょう。それはコンサルタントにとって脅威です。
しかし同時に、コンサルティングという仕事が本来何を売る仕事なのかを問い直す機会でもあります。
AIに「何をすべきか」は聞ける。
「どれを選ぶべきか」も聞ける。
「どう進めるべきか」さえ聞ける。
それでも最後に残るのは、その答えを使って、実際に会社を前へ動かす仕事です。
これから企業がコンサルタントへお金を払うとすれば、「答えを持っているから」ではなく、答えを意思決定に変え、意思決定を実行に変え、途中で問題が起きても前へ進められるからではないでしょうか。
AIに相談した。その先を、一緒に動かす。
システム刷新やDXについて、まず生成AIに相談してみる。私たちは、それでよいと思っています。一般的な知識を得たり、選択肢を洗い出したり、考えを整理したりするためだけなら、最初から高額なコンサルティング費用を払う必要はありません。
しかし、
- 選択肢は出揃ったが、自社としてどれを選ぶべきか決めきれない
- ベンダーから提案や見積が出てきたが、妥当性を判断できない
- 方針は決まったが、実際にどう進めればよいか分からない
- プロジェクトが計画通り進まず、立て直し方が分からない
というところで止まったら、そこから先が私たちの仕事です。
オーシャン・アンド・パートナーズは、システム会社や製品ベンダーではなく、発注者側の立場から「判断」と「実行」を支援するITコンサルティング会社です。答えを渡して終わるのではなく、何を選ぶかを一緒に整理し、発注・ベンダー選定・プロジェクト推進まで、実現するところに関わります。
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この記事を書いた人について

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オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事
富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。






















