「システム会社をコンペで選ぶ」落とし穴

2018/03/13

その合理性は全てには当てはまらない

「えっ、コンペで選ぶのは当たり前でしょ!」と思ったあなたへ。

そうですよね。私自身もかつてはコンペでシステム開発会社を選ぶのは、「然るべき手順」でかつ「合理的」だと思っていました。しかしコンペで決めようが、一本釣りで決めようがダメなものはダメでしたし、うまくいくものはうまくいきました。コンペで決めたからといって失敗確率が下がるわけでもない。残る唯一のメリットは失敗したときの社内の風当たりを避けることぐらいです。

つまり「システム開発会社にコンペさせて、みんなで多数決で決めたのだから仕方ないでしょ」という言い訳が立つくらいのことなのです。成果が出せた開発案件は、コンペを経たものもあれば、そうでないものもある。絶対条件ではないと断言します。なぜでしょう?

コンペに向いている仕事と向いていない仕事

まずコンペに向く仕事と向かない仕事が存在します。

仕事には定量的な成果が求められるものと、定性的に評価するものがあります。定量的な仕事、つまり誰がやってもさほど成果物に差が出ない仕事を「作業」と呼びます。もしあなたが「作業」を外部に発注するなら、調達コストを下げるためにコンペや相見積もりは向いています。仕様どおりに仕上げて欲しい仕事、ルーチンの仕事、大量に均質に納品して欲しい場合は、ぜひそうすべきでしょう。その一方で、依頼者が定性資質を見定めたい場合は、コンペは向いていません。

さらにコンペを行うには、まず候補者を集めないといけません。そして集まった候補者を競わせてその中から1社を選ぶ。ということは、コンペを行う前の段階から、依頼者が得られる成果の最大ポテンシャルが決定しているわけです。その後行程、つまりコンペを行い、最終的な1社を決めるというプロセスをいくら創意工夫しても、その努力は上限値を引き上げることに何ら寄与しません。

コンペは一回限りの合コンで結婚相手を決めるようなもの。

このように、あくまでもコンペに名乗りを上げたなかでの選定ということになりますから、いわば一回限りの合コンで結婚相手を決めるということと同じです。

ちょっと無謀な気がしますね。それもそう。恋愛市場と経済市場は似て非なり、その逆も真なり。売れている人は、わざわざ合コンで相手を探す必要はありません。同じように力のあるシステム開発会社はわざわざコンペに顔を出す必要もないのです。

力のある業者はなぜコンペを辞退するのか?についてはこちら にも詳しく書きましたので割愛します。コンペの裏側に隠れたトリックと業者の心理が分かると、開発会社の選定効率が格段に上がります。

民間ならコンペより最適な選定方法が取れる

世の中では今日もあちらこちらでコンペが行われています。発注する会社にも業者選定に関するルールがあったりします。しかし公平に選んで発注先を決めることには、まったく意味がありません。これらはあくまでも建前で、本音のところは「みんなで多数決で決めて責任を分散しましょうね」と意味で、コンペはそのためのセレモニーです。

もし、あなたが民間企業の経営者なら、あなたの大事なお金と時間をかけて会社の運命を託すのに、そんな博打を打つことができますか?このレポートにも書かれているたったひとつの質問が、コンペよりも大事なのです。

世の中では今日もあちらこちらでコンペが行われています。発注する会社にも業者選定に関するルールがあったりします。しかし公平に選んでシステム開発会社を決めることには、まったく意味がありません。これらはあくまでも建前で、本音のところは「みんなで多数決で決めて責任を分散しましょうね」と意味で、コンペはそのためのセレモニーです。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。