「属人化をなくせ」と言うコンサルは、なぜこんなに属人的なのか―フレームワークに収まらなくなったところから、仕事が始まる

前回、企業における「属人化」と「属人性」の違いについて書きました。

「その人しかやり方を知らない」のが属人化なら、「その人だから、その判断になる」のが属人性です。前者はできるだけなくした方がいい。一方、後者はむしろ企業の武器になるのではないか、という話でした。

では、この話をコンサルタント自身に向けてみるとどうなるでしょうか。

少し困ったことになります。

なぜなら、コンサルタントは顧客にこう言う側だからです。

「属人化をなくしましょう」

業務を標準化しましょう。ナレッジを共有しましょう。誰が担当しても一定の品質になるようにしましょう。もっともな話です。

ところが、そのコンサルタント本人を別の人に替えたら、同じ結果になるのでしょうか。

おそらく、なりません。

「実際には、誰が来るんですか?」

コンサルティングの商談では、会社としての実績や提案内容だけでなく、「実際には、誰が担当するんですか?」と聞かれることがあります。

考えてみれば、これは面白い質問です。

コンサルティングが完全に標準化されたサービスなら、誰が担当しても同じ結果になるはずです。会社として方法論があり、品質管理もされているのであれば、担当者が誰なのかを顧客が気にする必要はありません。

しかし、実際には気にします。

  • 「この人なら経営会議にも入ってもらえそうだ」
  • 「この人は現場の話も分かりそうだ」
  • 「この人になら、少し言いにくい話もできそうだ」

逆に、会社としてどれほど立派な実績があっても、実際に担当する人と話して「ちょっと違うな」と思われれば、仕事にならないこともあります。

つまりコンサルティングという仕事は、顧客の属人化をなくすことを支援しながら、自分たちの商品にはかなり強い属人性があります。

なぜなのでしょうか。

正解が決まっているなら、そもそもコンサルはいらない

ここで、そもそも企業はどんなときにコンサルタントを必要とするのかを考えてみます。

やり方が決まっていて、正解も分かっている。手順に従えば誰でも同じ結果になる。そういう仕事なら、マニュアルにすればいい。システム化してもいい。専門サービスを買ってもいい。今ならAIに任せられる領域も増えています。わざわざ高い費用を払ってコンサルタントを呼ぶ必要はありません。

コンサルタントが必要になるのは、むしろその逆です。

選択肢がいくつもある。どれにもメリットとデメリットがある。社内でも意見が割れている。正解はやってみなければ分からない。それでも、誰かが決めなければならない。

つまりコンサルティングとは、もともと「標準化しにくい問題」を扱う仕事なのではないでしょうか。

そう考えると、コンサルティングが属人的であること自体は、それほど不思議ではなくなります。

フレームワークは、とても役に立つ。でも、その先がある

コンサルティングには、さまざまなフレームワークがあります。3C、SWOT、PEST、バリューチェーン、As-Is/To-Be。

こうしたものは非常に有用です。複雑な状況を整理し、論点の抜け漏れを防ぎ、関係者の認識をそろえることができます。私たちも、必要に応じて使います。

ただ、特定のフレームワークや自社固有の方法論を「この順番で当てはめれば答えが出る」という型として固定しているわけではありません。

理由は、私たちのところに相談が来るタイミングにあります。

経営戦略がないわけではない。DX構想もある。ITグランドデザインもある。場合によっては、すでに別のコンサル会社がきれいに整理し、立派なドキュメントとして納品しています。

それでも相談が来ます。

そのときによく出てくるのが、「それは分かりました。で、実際どうするんですか?」という問いです。

私たちは、この「で、どうする?」から先で皆さんが悩んでいる場面に入ることが少なくありません。そして、ここから急に話が泥臭くなります。

SWOTに「専務と営業部長が犬猿の仲」という欄はない

理屈ではA案がいい。費用対効果を考えてもA案です。将来性を考えてもA案です。

ではA案で進めればいいかというと、現実はそれほど簡単ではありません。

  • A案を進めるには営業部門の協力が必要なのに、営業部長がそもそもプロジェクトに反対している
  • 3年前に似た取り組みで大失敗していて、現場には「また本社が何か始めた」という空気がある
  • 社長は改革したいと言っているが、実際に業務を知っている部長はあと2年で退職するつもりでいる
  • 長年付き合ってきたベンダーを切り替えることに、合理性だけでは割り切れない抵抗がある

こういう話が次々に出てきます。

SWOTには、「専務と営業部長が犬猿の仲」という欄はありません。As-IsとTo-Beの間にも、「3年前の失敗で現場が改革に懲りている」という箱はありません。しかし、実際にプロジェクトを動かそうとすると、そういうものが猛烈に効いてきます。

フレームワークが役に立たないのではありません。フレームワークできれいに整理した後にも、まだ問題が残るのです。

そして私は、フレームワークの枠にきれいに引っかからなくなったところから、コンサルタントの個人差が出始めるのだと思っています。

正解と実行の間には、人間がいる

このフェーズで必要なのは、「正しい答え」を出すことだけではありません。むしろ難しいのは、正しいと思うことをどうやって実行するかです。

  • 社長に直接言うのか
  • 担当役員から言ってもらうのか
  • 反対している部門を先に巻き込むのか
  • いきなり全社で始めず、一部門だけで小さく始めるのか

理屈ではA案がベストでも、「今のこの会社ならB案から始めた方が動く」と判断することもあります。

正論を言うだけなら、それほど難しくありません。難しいのは、正論を現実の会社の中で通すことです。

その間には、組織があります。人間関係があります。過去の経緯があります。感情があります。そして、それぞれの人が背負っている責任があります。

正解と実行の間には、人間がいるのです。

ここは、フレームワークだけではなかなか埋まりません。

経営者は「答えが分からない」からコンサルを呼ぶとは限らない

もう一つ、コンサルティングには少し生々しい側面があります。

経営者は、いつも答えが分からないからコンサルタントを呼ぶわけではありません。本人の中では、ある程度答えが見えていることもあります。

  • 「たぶん、このシステムは刷新した方がいい」
  • 「この事業は撤退した方がいいかもしれない」
  • 「このままでは組織を変えなければならない」

しかし、分かっていることと、決めることは違います。

社内には反対する役員がいるかもしれない。多額の投資が必要かもしれない。失敗すれば自分の責任になります。社員や取引先にも説明しなければなりません。経営の意思決定は、ときにかなり孤独です。

そんなとき、「分析すると、この案が合理的です」という報告だけではなく、「私も、この案で進めるべきだと思います」と言う第三者が必要になることがあります。

逆に、「社長、それはやめた方がいいと思います」と言うことを求められる場合もあります。

コンサルタントが提供しているものの中には、分析だけではなく、こうした意思決定への参加も含まれているのではないでしょうか。

もちろん、最終的な経営責任をコンサルタントが代わりに負えるわけではありません。それでも、判断の場に入り、自分の見立てを明らかにし、その後の実行にも付き合う。

ここには、かなり属人的なものがあります。

AIが露わにする「作業」と「コンサルティング」の境界

生成AIの登場は、この構造をさらに分かりやすくしています。

情報収集、比較、要約、データ整理、論点抽出、資料のたたき台作成。こうした仕事の多くは、急速にAIで効率化できるようになっています。SWOT分析を頼めば、それらしい四象限もすぐに出てきます。3CでもPESTでも同じです。

これは、「AIがコンサルタントになった」と見ることもできます。しかし、別の見方もできると思います。

フレームワークに情報を当てはめて整理する仕事は、もともと標準化しやすい仕事だった。AIによって、それが露わになっただけなのかもしれません。

では、その仕事をどんどんAIに渡した後、何が残るのでしょうか。

私は、そこで初めてコンサルタントの属人性がはっきりするのではないかと思います。同じ情報を見ても、

  • 「この会社なら、今はやらない方がいい」と言う人もいる
  • 「多少の反発があっても、今やるべきです」と言う人もいる

そして、その違いは知識量だけでは説明できません。

何を疑うのか。何を重く見るのか。どこまでリスクを取るのか。誰の言葉を信用するのか。どこまで顧客に踏み込むのか。その人の経験、価値観、失敗、仕事観まで、判断に入ってきます。

「その人しかやり方を知らない」のが属人化なら、「その人だから、その判断になる」のが属人性です。コンサルティングで価値になるのは、後者ではないでしょうか。

誰に頼んでも同じなら、コンサルタントを選ぶ意味がない

コンサル会社自身も、属人化は徹底的になくした方がいいと思います。

調査方法は共有する。過去の知見も蓄積する。プロジェクト管理も標準化する。資料作成も効率化する。AIでできることはAIに任せる。「あの人しかやり方を知らない」は、できるだけなくす。

しかし、「あの人だから、その判断になる」までなくしてしまう必要はありません。

むしろ、そこまで誰がやっても同じになったら、顧客がコンサルタントを選ぶ意味そのものが薄れてしまいます。

誰が担当しても同じ分析。誰が担当しても同じ四象限。誰が担当しても同じリスクを列挙し、最後は「総合的に判断する必要があります」と書いてある。それなら、高いフィーを払って人間のコンサルタントを雇う必要があるのでしょうか。AIで十分かもしれません。

コンサルティングという仕事が本当に必要になるのは、おそらくその逆です。

正解が決まっていない。利害がぶつかっている。理屈どおりには動かない。どちらを選んでもリスクがある。それでも、誰かが決めなければならない。

そんなときに、最後に聞かれるのは、「で、あなたはどう思いますか?」です。

その問いに、フレームワークの陰から答えるのではなく、自分の判断として答える。そして、決まった後も実行まで付き合う。

顧客には「属人化をなくしましょう」と言いながら、自分自身は「この人に相談したい」と思ってもらえる属人性を磨く。一見すると矛盾しているようですが、私はむしろ、それがコンサルティングという仕事なのではないかと思っています。

フレームワークにきれいに収まらなくなったところから、私たちの仕事は始まります。

「で、実際どうする?」で止まっていませんか?

構想や方針はある。課題もある程度見えている。
それでも、社内事情や関係者の意見が絡み、次の一手が決めきれない。

私たちは、そんな「フレームワークの先」にある判断と実行を、発注側の立場で一緒に整理します。

[「で、どうする?」を相談する]

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。

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